15話
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白い光りを放つ満月。その光が僕を照らす。その光は僕という存在を否定したがっているようにも感じる。
その満月の下には『地獄』があった。なんで地獄なんだと思ったのかは分からない。ただ素直にそう感じたからだ。千や二千では収まらないほどの白い花が揺れずにそこにある。その花たちは僕に向いている。もし目があるなら花は僕を睨んでいると思えた。
一般的には神秘的な、綺麗な世界なんだろう。だけど、ここは僕にとっては虫唾が走るほどの嫌悪しか湧き出てこない。出来ることなら今すぐにでも消したかった。
―――ダメだ、見ちゃいけない。
この地獄、花畑の真ん中に2人の人間がいた。
―――これ以上踏み込むな。
腰を下ろし右膝を立て、その膝に頭を乗せて俯いている『僕』。……なんであれが僕なんだと僕は分かった? あんな弱そうな姿が僕なわけがない。
―――これ以上知れば、きっととんでもないことが起きる。
『僕』の隣には木製の杖で身体を支えている背の高い、背筋がまっすぐに伸びた老人がいる。どこかで見たことがあるような気がした。だけど、思い出すことは出来ない。
―――あの2人はきっと、僕を―――す存在だ。
がさ、と音を立てて左足を1歩後ろに下げる。
その音に老人が気づいたのか視線を僕に向けた。
「……なるほど、今度はそっちの君が来たか。久しぶりだな鬼一くん。最後に会ったのは鬼神の最終調整をした時だったな」
その険しい表情と厳格な声に僕の身体が止まる。いや、止められてた。そして今、喋っているこの人は一体誰だ? 僕はこの人のことを知らないのに。一体何を喋っているんだ? 僕は、この人を、知らないのに。
「あぁ、しゃべる必要はない。君はどうせ思い出すことが出来ないからな。この子の生み出した歪みの1人である以上、出ていけばここのことは嫌でも忘れるだろう。そして君は何も思い出せないまま生きればいい。それがお互いのためでもある。この子を不用意に目覚めさせたくないからな。外の世界はこの子にとってあまりにも残酷すぎるし、利用されてしまう力だ」
険しい表情から一転、悲しみに彩られた表情で僕を見てこの老人の隣にいる『僕』に向けられる。
声を出そうとしたが、僕の口は開くだけで声を出すことは叶わない。
「―――。―――っ!?」
「無駄だ。ここは君になんの権限もない。子供が親に叶うはずもないだろう」
1度だけ目を伏せた老人は再度目を開き、僕に視線を向ける。どこか哀れみが籠ったその視線は僕を熱くさせた。
走り出そうとした身体だったがそれすらも叶わない。金縛りにかかったように少しも動いてくれなかった。
「次に会うことはもうないだろうが、それでも言わせてもらう。君たちのおかげでこの子はまだ休んでい
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