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雷切
第四章

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 その彼にだ、両親は呆れて言った。
「学問をせぬのか」
「剣術ばかりして」
「確かに剣術は武士の芸だが」
「それでもそればかりはよくないのに」
「本当に少しは学問をせぬか」
「そちらもなのよ」
「いえ、拙者はです」
 頑固な声でだ、彼は言うのだった。自身の両親にも、
「このままです」
「剣か」
「それに励むというのね」
「はい、そして雷を切ります」
 こう強い声で言うのだった。
「手も使わず」
「そんなことが出来るものか」
「また夢の様なことを」
「その夢の様なことをです」
 両親に言われてもだ、その声は動じていない。それも全く。
「してみせます」
「全く、ここまで剣ばかりとはな」
「困ったことね」
(学問をせずに」
「そればかりして」
 こう言うがだ、しかしだった。
 もう両親もだ、観念して岩田に言った。自分達の息子に。
「しかし家の恥になることはしていない」
「ただ剣に打ち込んでいるだけだからな」
「ならだ、いいだろう」
「城勤めだけはしっかりするんだよ」
「有り難うございます、それでは」
 強い声で述べてだ、岩田はそれからも修行を続けた。家督を継ぎ江戸城で勤めることになってもだ、l暇があれば常にだった。 
 刀を、木刀でも竹刀でも持ってだった。荒々しい修行を続け座禅も組みだ。日々鍛錬を続けていた。そのうちに。
 刀を振るとだ、その先の木や石が切れる様になった。屋敷の石灯籠をそうして真っ二つにしたのを見てだ、妻に迎えたおさよが言った。小柄で整った顔立ちの女だ。
「これ程までの腕は」
「見たことはないか」
「聞いたことがありますが」
 それでもというのだ。
「気を使う様になるまでとは」
「そうか、しかしだ」
「それでもですか」
「まだ手を使っている」
 だからだというのだ。
「これではだ「
「まだまだですか」
「雷を切れない」
 妻にも言うのだった。
「まだな」
「手を使わずともですか」
「そうだ、何で雷を切るのかはわかった」
「刀ではなくですね」
「気だ」
 それだというのだ。
「それで切ることはわかった、しかしだ」
「それを手を使わずにですか」
「切る、それはだ」
「出来ませんか」
「先生は言われた」
 草薙だ、もう老齢なので隠居して道場は娘婿に譲っている。
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