第二章
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「切りたい、立花殿の様に」
「ではどうするのか」
「それが問題であるな」
「うむ、一度師に話をしてみる」
その願いを話すというのだ。
「じっくりとな」
「そうしてみるか」
「それで許してもらえればいいな」
「雷を切ることが」
「そうじゃな、どうしてもと止められているが」
それでも望みをまた伝えるとだ、岩田は言った。そうした話を彼の屋敷で稽古の後で話してだった。その次の日にだった。
道場で稽古の後で師匠の草薙九右衛門、初老であるがしっかりとした背筋の白髪の男に願いを話した、すると。
草薙は眉を顰めさせてだ、岩田に言った。
「ならぬと言った筈だが」
「ですが」
「どうしてもか」
「雷を切りたいのです」
こう言うのだった、師匠である草薙にも。
「拙者は」
「どうしてもか」
「立花道雪殿の様に」
「そうか、その思いは変わらぬか」
「そのつもりです」
「わかった」
ここまで聞いてだ、草薙は言った。
「ならよい」
「雷を切ることは」
「そうせよ、しかしじゃ」
「しかし?」
「刀で切ってはならぬ」
草薙は岩田にこう告げた。
「そして手を動かしてもならぬ」
「刀を用いぬどころか」
「手も使ってはならぬ」
「それは一体」
「修行を積むことだ」
草薙は多くを語らなかった、今言うのはこれだけだった。
「そうすればな」
「手を使わずとも」
「切ることが出来る」
その雷をというのだ。
「そうせよ」
「何も使わずにですか」
「そうだ、雷を切ってみよ」
「その様なことが出来るのですか」
「わしが聞いた限りでは出来る」
その到底不可能と思えることがというのだ。
「だからだ」
「雷は、ですか」
「そうして切れ、わかったな」
「若しそれが出来ねば」
「切るな」
雷をとだ、草薙は告げた。
「断じてな」
「そう仰いますか」
「そうだ、わかったな」
「ですか、では」
岩田もだ、雷を切っていいと言われたのだからだった。師の言葉は受けることにした。だがそれでもだった。
どうして刀も手も使わずに雷が切れるのか、そもそも切れるのかがわからずだ。修行を続ける中で友人達に言った。
「どうしてもわからぬ」
「ああ、雷を切ることか」
「それのことか」
「御主の師に言われたそうだな」
「刀も手も使わずして切れと」
「雷を」
「そうだ、そんなことが出来るのか」
首を傾げさせつつ言うのだった。
「一体」
「さてな、手裏剣を使えばな」
一人がここでこう言った、今一行は蕎麦屋で蕎麦を食べながら話をしている。ざるそばのその味を楽しみながら。
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