第一章
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雷切
立花道雪は大友家の家臣達の中でその武勇を知られた者だ。戦になればまさに鬼の様な強さを見せていた。
その彼の話は時代が変わっていても知られていてだ、江戸の侍達もよく彼について話をした。
「まさに武士であるな」
「そうであるな」
「あれだけの武勇、見習わねば」
「武士はああなりたい」
「是非な」
「その通りじゃ」
そしてだ、旗本の嫡男である岩田作左衛門が唸る様にして言った。五百石の家の跡継ぎであるが日々武芸にばかり精を出していて親からはもう少し学問をせよと言われている。しかし常に竹刀を持ち防具を着けている。
その彼がだ、友達に言ったのだ。
「我等は武士、それならばな」
「是非共だな」
「立花殿の様にならねばならん」
「そうであるな」
「あの方は雷を刀で切られた」
立花道雪の有名な逸話である、彼が持っている名刀でそうしたのだ。
「横から一気にな」
「そして足腰が動かぬ様になったというが」
「そうしても戦の場では輿に乗り戦い」
「その輿を敵の軍勢に真っ先に突っ込ませた」
「見事な話であるな」
「武士はそうでなくてはならぬ」
絶対にとも言う岩田だった。
「拙者もそう思う」
「では貴殿もか」
「雷を切るのか」
「そうしたいのか」
「立花殿の様に」
「そう考えておる、しかしじゃ」
ここでだ、岩田は友人達に難しい顔で述べた。
「それがな」
「出来ぬな、やはり」
「それで足腰が立たなくなるからな」
「どうしても」
「そうなるからと父上にも母上にも止められておってじゃ」
日頃もっと学問に励めと五月蝿い両親にというのだ、何しろ江戸城でも勤めのある旗本の嫡男だからだ。
「それにじゃ」
「さらにじゃな」
「あるな」
「師にも止められておる」
難しい顔でだ、岩田は言った。見れば細面で引き締まった見事な顔だ。唇は暑く眉は細いが黒々としている。
背は力士の様に高く細身だが引き締まっていてだ、如何にも武芸に精を出しているのがわかる。
その彼がだ、こう言ったのだ。
「そういうことをしてはならぬとな」
「貴殿が頭が上がらぬという」
「その方にもな」
「江戸でも相当な剣の腕の方であったな」
「その方が言われておるのか」
「足腰が立たずして剣を操れるのか」
こう言ってというのだ。
「そう仰ってな」
「それでか」
「御主は立花殿の様なことはせぬか」
「雷を切る様なことは」
「それは」
「滝は切れる」
こちらはというのだ。
「横からも切れるし袈裟切りにもな」
「どれでもか」
「それは出来るのか」
「それも相当であるが」
「それはな、しかしじゃ」
岩田は友人達にさらに話した。
「果たして雷は切れるか」
「その
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