暁 〜小説投稿サイト〜
時にはアンニュイ
第二章

[8]前話 [2]次話
「何かね」
「明るくないんだ」
「気分がね」
 それこそだった、お昼も。
「落ち着いているんじゃなくて」
「けだるい?」
「そうなの、穏やかでもなくて」
「けだるいんだ」
「そうなの、だから今日はね」
「バーでのデートがしたかったんだ」
「そうなの、いつもと違って」
 私はモスコミュールを飲みつつ彼に話した。
「そんな気持ちなの」
「君がそんな気持ちになるなんてね」
「意外かしら」
「うん、意外だよ」
 その通りだとだ、彼は私に答えた。
「それはね」
「やっぱりそうなのね」
「けれどね」
「けれど?」
「それもあるかな」
 こうもだ、彼は私に言った。
「誰だってどんな時もあるし」
「私にしてもけだるい時が」
「僕だって落ち込むしね」
「私だって落ち込むわよ」
「そうだろ、だからね」
 それでというのだった。
「それもありかな」
「そうなのね」
「そう、あるよ」
 そうだというのだ。
「考えてみたらね」
「そう言うのね」
「そう、じゃあ今日はね」
「こうして」
「そう、飲むわ」
 こう言うのだった、そしてだった。
 私はカクテルをまた一口飲んでだ、彼に言った。
「今日はここでね」
「一緒に飲もう」
「心ゆくまでね」
 私から彼に言ってだ、実際に。
 二人で一緒に飲んだ、バーで静かに。そしてバーを出た時は。
 私は彼にだ、こう言った。
「足がね」
「ふらついてるとか」
「ちょっとね、けれどね」
「今日はだね」
「自分の部屋に帰って休むわ」
「けだるいから」
「それでシャワーを浴びて」
 そしてとだ、彼に話した。
「休むわ」
「僕の部屋には来ないんだね」
「あなたの部屋に行ったらいつも賑やかでしょ」
「そうだね、いつもはね」
「けれどそのいつもの気持ちじゃないから」
 今日はだ。
「それはいいわ」
「そうなのね」
「そう、いいから」
 だからとだ、彼にまた言った。そして。
 彼は私の部屋まで送ってくれた、その紳士さに心から感謝してお礼を言ってだ、扉を開けてから彼の方を振り向いて言葉を返した。
「明日からはね」
「いつもの賑やかな君にだね」
「戻るわ、多分ね」
「多分なんだ」
「どうなるかわからないから」
 気分のことだけはだ、だからこう彼に言葉を返したのだ。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ