特別篇その1 王子の初陣
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気付いた老人は、歯の抜けた口でカラカラと笑った。
「やあ、ご苦労様。他に市内に入り込んだ連中の始末はどうなっておる」
「クーペ隊長。市内の掃除は滞りなく進んでおります」
老人の正体はクーペだった。
かつて『荒事は向かない』と言っていたが、それは貴族が好む正々堂々の戦いが苦手であって、逆に鉄糸を使った暗殺術を得意としていた。
「他にも紛れ込んでいるかも知れない。わしは他の所を回ろうと思う。悪いが後片付けを頼む」
「了解」
老人に化けたクーペは、後片付けを部下達に任せると、他の路地裏へを姿を消した。
結局、市内に潜り込んだスパイは、反乱貴族と他国の者を合わせて十人ほどで、情報の供給源を絶たれた反乱貴族にとっては、マクシミリアン率いる討伐軍の情報を得られなくなり、それが彼ら命取りになる。
☆ ☆ ☆
トリスタニアを出たマクシミリアン軍は、反乱貴族を求め南下を始めた。
目指すはブラバンド公爵という貴族の領地で、クーペから早々にブラバンド公爵が傭兵を集めていると聞き、速攻で片を付けるために軍を進めた。
「で、ブラバンド公は、領内にて我がトリステインの旗を逆さに掲げ、叛意を示しているのだな?」
「御意にございます。さらに大勢の傭兵を集めており、既に五百を越す軍勢に膨れ上がっているそうにございます」
マクシミリアンは密偵からの報告を受けると、『サイレント』が付加されたマジックアイテムの『防音テント』にダグーや参謀らを集め、作戦会議は執り行われる事になった。
「殿下、このまま手を拱いていれば、反乱軍はさらに数を増すことでしょう」
「ダグー殿の言う通りでございます。敵に時間を与えれば、景気付けにと周辺の村々を略奪して回る事も十分予想されます。早々に鎮圧するべきです」
ダグーとラザールがそれぞれの考えを述べた。
「そうだな……ブラバンド公の軍勢は今何処にいる?」
マクシミリアンは参謀のジェミニ兄弟に詳細を聞いた。
「傭兵団は無能にもブラバンド公から離れ」
「全軍の五百名が単独行動をとっております」
交互に喋るジェミニ兄弟の報告を聞いて、ダグーが激高した。
「早速、略奪を働こうとしているに違いありません!」
「どうやらそのようだな……よし、敵の略奪をみすみす見逃す手は無いし、各個撃破のチャンスだ。急ぎ攻撃計画を練ってくれ」
「御意」
ダグーはの部隊に帰り、ラザールとジェミニ兄弟ら参謀陣は攻撃計画を練るために防音テントに残った。
マクシミリアンは『後学のために』と、テントに残り参謀達を見学する事に
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