特別篇その1 王子の初陣
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。トリステイン王国は今日変わる。出立!」
人馬ゴーレムに守られたマクシミリアンは、住まいである新宮殿に別れを告げた。
……
チクトンネ街の大通りは、多くの市民が列を成してきたマクシミリアン軍に驚き道を開けた。
「あれは何処の軍だ?」
「黒布に金の獅子は、マクシミリアン王太子殿下の旗だった筈だ」
「何々? 何が起こったの?」
「これじゃ商売上がったりだ」
市民は戸惑いの声を挙げた。
無理も無い。それほど広くない大通りにミニエー銃を担いだ歩兵隊が列を成して現れたからだ。
そして、ほんの一日前に、このトリステインで内乱が勃発したという情報を、市民達は誰も知らないからだ。
歩兵隊の次は自走ロケット隊、次に補給隊、そして最後に30騎の人馬ゴーレムに守られたマクシミリアンが現れると市民の喧騒は最高潮に達した。
「おお! 王子様だ!」
「まさか、王子様自らご出馬されるのか?」
「何処かと戦争をするのかのう……」
「戦争の噂なんて聞いたこと無いぜ?」
市民は口々に噂をし始めた。
ガチャガチャと音を立てながら人馬ゴーレムは行進し、それに続くマクシミリアンは手を振って応えた。
……
「いくらなんでも早すぎる!」
トリスタニア市内に潜り込ませた有力反乱貴族のスパイは目の前の光景を見て驚いた。
雇い主の命を受け、市内に潜入したその日に、もう反乱鎮圧の軍隊が出動をしたのだ。
「急いで知らせねば!」
物乞いに変装していたスパイは、急いで路地裏に身を隠しトリスタニアから脱出を図ろうとした。
だが、『ガクン』という音と共に、何かが自分の身体が空中で制止させた。
「あ、ぐ……?」
細く見えない鉄糸が路地裏に張り巡らされていて、スパイはボンレスハムの様に鉄糸で雁字搦めにされ宙吊りになっていた。
「だ、誰か……」
助けを求めようと大声を上げるが、声はハエの飛翔音並みの小さな声しか出ず、それ所か無理な体勢が祟って息も苦しくなって来た。
「……が、かはっ」
鉄糸が身体に食い込み血が滴り落ちる。幸いにもスパイの苦しみが永遠に続くことは無かった。
「……」
路地裏に居た『誰か』が鉄糸の一本を弦楽器の様に『ビン』と音を鳴らすと、鉄糸は凶器となって身体に食い込み、スパイは一瞬でミンチになってしまった。
血煙が舞う路地の陰から現れたのは、下町辺りで地べたに座っていそうな、よぼよぼの老人だった。
老人の枯れ木の様な指一本一本に指輪が嵌められていて、パチンと指を鳴らすと鉄糸は全て指輪の中に納まった。
この惨劇の主犯はこの老人だった。
そんな異常な空間に町人風の男がやって来た。
男に
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