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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十二話 シャンタウ星域の会戦 (その4)
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、モートン提督から通信です」
オペレータの声とともにスクリーンにモートン提督が映る。敬礼を交わすとモートン提督が話しかけてきた。
「ビュコック提督、小官が敵を足止めします」
「モートン提督……」
穏やかで朗らかな声だった。戦況はとてもそんな声が出せる状況ではなかろう。それなのに……。
「このままでは、同盟軍は全滅しかねません。小官が敵を食い止めている間に何とかボロディン提督を助け撤退していただきたい」
「すまぬ、モートン提督」
「気にしないでください。まあ大将になるのは先を越されましたが、元帥は小官のほうが先ですな」
「……」
「後を頼みますぞ、ビュコック提督」
「……分った」
互いに敬礼し、通信を切った。彼の犠牲を無駄には出来ん。
「第四分艦隊に命令、第十二艦隊を攻撃している艦隊の側面を突け」
「はっ」
オペレータが命令を伝える。第四分艦隊が敵を牽制してくれれば後はボロディンの事じゃ、自分で何とかするじゃろう。
スクリーンを見ると第四艦隊が三方から猛攻を受けている。長くは持たん。彼が持ちこたえてくれている間にボロディンを助け撤退する。別働隊がこちらへ来た以上、もう左翼を助けている暇は無い。無情なようじゃが、今は逃げる事を、生き残ることを優先せざるをえん。
わしらは死ねん。絶対に生きてモートン提督の犠牲に応えなくてはならん。これからの撤退はおそらく地獄の苦しみじゃろう。戦死したほうが楽かもしれん。それでもわしらは死ぬことが出来ん。モートン提督に後を頼まれたのじゃから……。
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