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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十二話 シャンタウ星域の会戦 (その4)
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か言いようが無い。俺は敵の第十二艦隊に攻撃をかけるが相手はそれをあしらいながら後退していく。
拙いな。クレメンツ提督もメルカッツ提督も進む事が出来ない。このまま後退を許してしまえば、敵は別働隊の後ろに回る行動を取るだろう。挟撃体勢が崩れかねない。
思い切って攻撃を仕掛けるか……。駄目だ、敵を多少は足止めできるが損害も馬鹿にならない、どうしたものか。そんな俺の葛藤を吹き飛ばしたのはオペレータの歓喜に満ちた声だった。
「別働隊が来援に来ました! ビッテンフェルト艦隊です!」
ビッテンフェルト提督の攻撃とともに第十二艦隊は崩れ始めた。側面に火球が次々と浮き上がる。
「全艦に命令、前進し攻撃せよ。ビッテンフェルト提督に遅れるな!」
第十二艦隊を潰してしまえばクレメンツ提督も前進して攻撃できる! そのまま敵の右翼を順に潰していけば良い。
艦隊が前進し第十二艦隊に攻撃を開始する。敵が崩れる、勝った、そう思った瞬間だった。自分の艦隊が隊形を崩している、どういうことだ? 一体何が起きた?
「敵が攻撃してきます」
オペレータの声に愕然として問い返す。
「敵? どういうことだ?」
「敵の第四艦隊です、第十二艦隊の隣に居た……」
信じられないと言った口調でオペレータが答える。
スクリーンを見る。確かにこちらを攻撃している。しかも、前面の敵、後方の敵を投げ打ってこちらを攻撃している。
「馬鹿な……、全滅する気か?」
隣でドレウェンツ中尉が呻く様に言葉を出す。
同感だ、前方にローエングラム伯、後方にレンネンカンプ、その二人を相手にしているのにこちらに攻撃をかけてきた。第十二艦隊を逃がすためか、それが右翼の味方を逃がす事になるからか?
「艦列を整えろ、装甲の厚い戦艦を外側に、弱い砲艦、ミサイル艦を内側に、先ず右の敵を潰すぞ!」
三方から攻める! 急がなくては、前面の敵が態勢を立て直してしまう。こんなところで時間を取られるわけにはいかない。
宇宙暦796年8月19日 4:00 第五艦隊旗艦リオ・グランデ アレクサンドル・ビュコック
前方から攻め寄せる敵に対し迎撃命令を出しながら、崩れかける第一二艦隊の姿にわしは絶望感に囚われていた。ボロディンが崩れれば凹陣は成り立たん。前面の敵は怯む事無く攻撃をかけてくるじゃろう。
このままでは敵を振り切れない。一番嫌なタイミングで敵の増援が来た。これまでか、結局此処で死ぬ事になるのか……。
諦めかけていたわしの目の前で、正面から第十二艦隊に攻め寄せる敵に対しモートン提督の第四艦隊が猛烈な攻撃をかけ始めた。
前後から攻撃してくる敵を無視して右側面をすり抜けようとする敵艦隊を第四艦隊が攻撃する。馬鹿な、モートン提督、死ぬ気か?
「閣下
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