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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十二話 シャンタウ星域の会戦 (その4)
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一つ頷くと
「ローエングラム伯との間に通信を開いてください」
と言った。
スクリーンにローエングラム伯が現れると司令長官は立ち上がり穏やかに話し始めた。
「なかなかしぶといですね」
「確かに」
ローエングラム伯も苦笑交じりに答える。彼にとっても同盟軍の攻勢は予想外のものなのかもしれない。
「ビッテンフェルト提督を引き抜こうと思いますが」
「右翼に当てるのですね」
ヴァレンシュタイン司令長官の言葉にローエングラム伯が頷きつつ答えた。
「そうです」
「では、ルッツ提督にその穴を埋めさせましょう。彼を側面に回らせます」
「そうしてもらえますか。しかし、なかなか網を手繰り寄せると言うわけにはいかないですね」
「確かに。なかなかしぶとい」
二人は苦笑すると敬礼を交わして通信を切った。司令長官はローエングラム伯との通信が終わると、ビッテンフェルト、ファーレンハイト提督との間に通信を開くように命じた。
「ビッテンフェルト提督、直ちに艦隊を右翼へ回してください」
「右翼へですか」
ビッテンフェルト提督が訝しげに反問する。
「さすがに反乱軍でも精鋭部隊です。一筋縄ではいきませんが、この辺りで終わらせようと思います。それをビッテンフェルト提督にお願いしたい」
「はっ」
ヴァレンシュタイン司令長官の言葉にビッテンフェルト提督は力強く答えた。自分が同盟の反撃を打ち砕く、勝利を決定付ける、そう思ったのだろう。顔を紅潮させている。
「ビッテンフェルト提督が抜けた後はファーレンハイト提督とルッツ提督でお願いします。ルッツ提督は側面に回ることになっています。ファーレンハイト提督はルッツ提督と協力して敵を包囲してください」
「はっ。承知しました」
命令を出し終えると司令長官は提督席にゆったりと体を沈めた。一つ大きく息を吐くと小さな声で呟いた。
「ヤン・ウェンリー、アムリッツァのようにはさせない」
ヤン・ウェンリー? アムリッツア? 一体何のことだろう。不思議に思って司令長官を見たが、司令長官は何も言わない。あるいは自分が呟いたことさえ気付いていないのかもしれない。
帝国軍が動き始めた。ルッツ艦隊が少しずつ艦隊を側面に移動させ、それに呼応すかのごとくビッテンフェルト艦隊が少しずつ艦隊を後退させていく。そしてファーレンハイト艦隊がビッテンフェルト艦隊の穴を埋めるかのように艦隊を左に伸ばす。
同盟軍第二艦隊の残存部隊はこれまでの前後からの攻撃に加え側面からも攻撃を受ける事になった。壊滅するのも時間の問題だろう……。
帝国暦 487年8月19日 4:00 帝国軍 ミュラー艦隊旗艦 バイロイト ナイトハルト・ミュラー
敵は少しずつ後退を始めている。敵ながら天晴れとし
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