11.ありがとう鈴谷
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ている。
「……那智さん探してるの?」
「いや、父ちゃんを……」
「ぁあなるほど。ニヤリ」
那智さんたちとの飲み会での父ちゃんの熱い叫びを思い出すねぇ……ニヤニヤ。
「かずゆきー! 案内終わったよー!」
程なくして鈴谷が会場の方から小走りで戻ってきた。
「あ、鈴谷ちゃんおつかれさまー!」
「おばさんもお疲れ! おじさんなら会場だよ?」
「そお? んじゃ私会場に行くわ」
「「ニヤニヤ」」
僕と鈴谷の意味深なほくそ笑みに気付かなかったのかそれともあえて無視したのかは分からないが……母ちゃんはそう言うとそそくさと会場に向かって走っていった。
「お二人とも、さっきから何ニヤニヤしてるんですか?」
「夫婦はいつまでたっても夫婦ということです。ニヤニヤ」
「鈴谷もああいう夫婦になりたいね。ニヤニヤ」
「?」
その後も押し寄せるコスプレ集団一人ひとりに挨拶し、それが終わったら僕も鈴谷とオオヨドエルの三人で会場に向かうことにする。途中で鹿島さんに
「和之さん? 私達のために告別式を企画してくれて……」
「……」
「本当に……ありがと」
「……?!!」
と、まるで天上の賛美歌のようなお声をかけていただき、危うく溶けた脳が耳から出てきそうになった。
「ああ……鹿島さん……たまらん……」
「鈴谷ももうちょっと色っぽい声の練習しようかなー……」
「何万年修行しようともお前には無理だろう」
「ひどっ」
鈴谷のボヤキはとりあえず置いておいて……会場に到着する。300人以上をゆうに収容できるこのホールのすでに半分以上の席が、今日の主賓たちによってうめつくされている。
「テートクぅぅうう!! なんでワタシたちを置いて逝っちゃったデスカー?!!」
金剛さんだっけ……怪しいガイジン訛りのかわいい声が会場にこだましていた。舞台を見ると、爺様の遺影の前で巫女服コスプレの一人が泣き崩れ、もう一人のショートカットの子が泣き崩れた子の肩を抱いて支えていた。みんなが献花しながら、ひとりずつお別れの言葉を述べているようだ。
「お姉さま……ぐすっ……気を、シッカリ……ぐすっ……」
「うう……テートク……ふぇあうぇる……」
金剛さんといえばさっきは明るく朗らかな挨拶をしてくれていた。でもそれはやっぱりフェイクで、本当の彼女の気持ちはきっと、爺様の死を悼む悲しみにあふれていたんだろう。今舞台の爺様の遺影の前で泣き崩れているあの姿が、偽らざる今の金剛さんなのだろう。
「金剛さん……あんな姿、見たことなかった……」
「……」
「金剛さんはね。みんなを励まして回ってたんだよ。泣いてる子に“テートクはすぐ帰ってくるからダイジョーブデース”て言いながら、みんなを励ましてたん
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