4部分:第四章
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第四章
「是非共ね」
「どうしてもなの?」
「安心しなさい」
怯えた感じを見せた我が子にだ。あえてだった。
母として今度は優しい顔になりだ。美也子は告げたのだった。
「悪い様にはしないわ」
「本当に?」
「お母さんが貴女に嘘を言ったことはあるかしら」
「それは」
「ないわよね」
「ええ、ないわ」
このことは確かだった。美也子は雛子にとっては優しい母なのだ。誰よりもだ。
それでだ。彼女も言うのだった。
「そんなことは一度も」
「そうね。じゃあいいわね」
「貴弘君にも何もしないのよね」
「勿論よ。私もお父さんもね」
今は一言も話さない父の顔も見てだ。母は娘に話した。
「絶対にしないわ。だからいいわね」
「ええ、じゃあ」
「パーティーの用意をしておくから」
実に楽しげに言う美也子だった。
「それじゃあいいわね」
「ええ、じゃあ」
こうしてだった。雛子はその彼を連れて来ることになった。次の日曜日にだ。
雛子は青いブレザー、彼の通っている制服の彼をだ。連れて来たのだった。見れば背は高くすらりとしている。黒髪の如何にも真面目そうな外見の少年だ。
その彼を案内してだ。美也子はだ。
穏やかな笑みでだ。こう言ったのである。
「いらっしゃい。雛ちゃんのお友達ね」
「はい、池上貴弘といいます」
こうだ。彼は美也子に頭を下げてから名乗った。美也子の横には省吾がいる。二人は落ち着いた服で玄関に並んで立っている。そのうえで学校の制服姿の娘と彼を出迎えていたのだ。
その貴弘にだ。美也子は優しい声で尋ねた。
「あがって。それでね」
「はい」
「雛ちゃんとはどうしてお友達になったのかしら」
「実は部活が同じで」
「バスケ部で?」
「それで一年の時に同じクラスでして」
このことをだ。貴弘は自分から美也子に話した。
「その縁で」
「付き合う様になったのね」
「あの、別に付き合うとか」
「いいのよ。それはね」
全てを包み込む優しい笑みだった。その笑みを彼に向けて安心させたのである。
そのうえでだ。美也子は彼をまた誘ったのだった。
「とにかくあがって」
「あっ、はい。それじゃあ」
「それでね。パーティーの用意をしてるから」
「パーティーといいますと」
「だって。雛ちゃんがはじめてお家に呼んでくれた彼氏なのよ」
それでだというのだ。
「だからね。歓迎のパーティーをね」
「用意してくれたんですか」
「だからあがって」
また誘う美也子だった。
「それで皆で楽しみましょう」
「あの、じゃあ」
「そうよね。それじゃあね」
これまで二人のやり取りを見守っていた雛子もだ。母がずっと優しいままでいるのを見てだ。
安心してだ。こう貴弘に言ったのだった。
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