暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第145話 星に願いを?
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えられない内容に成るのが確実。確かに、彼女の疑問すべてに明確な答えを返さなければならない謂れはない、とは思うのですが……。しかし、自分が何時、元の世界に帰る事が出来るのか、実はさっぱり分かっていない。……などと答えるのは流石に風が悪い。
 おそらく、呆れるか、非常に残念な子を見る瞳で見つめられ、最悪、慰められる可能性すら存在していると思われるので……。

「すまんけど、コートの右のポケットの中に入っている物を取り出して貰えるかな」

 俺の両手は、ほれこの通り塞がっているから。
 取って付けたような理由で一度話を逸らそうとする俺。もっとも、俺が片腕だけでハルヒを抱えながら、犬神使いの青年を相手に大立ち回りを演じられる能力が有る事を彼女は知っているので、この程度の小細工など本来は意味をなさないのですが……。

 ただ、

「――これね」

 俺の首に回していた両腕を外し、羽織って居るだけのチェスターコートの右側のポケットを探るハルヒ。ただ、その際にそれまで以上に密着する事となった身体が……。
 確かに、元々の体勢が俺に抱き上げられ、首に両腕を回す形。其処から左腕を右のポケット……腰の高さにあるポケットに突っ込もうとすると、どうしても右腕を俺の左肩から首の後ろに回し、身体は俺の方に向ける事となるので……。

 それまで以上に彼女の温もりを。そして、その長い髪の毛が揺れる度に強い花の香りを感じる事となる俺。
 この状態をもし誰かが見たと仮定すると、今の形は彼女を抱き上げる、と言うよりも、既に抱き合っている。そう言う形にしか見えないような気もするのだが……。

 急接近した後、視界から消えた――月の明かりに照らし出されたハルヒの横顔には疲れに因る綻びを一切感じる事はなかった。
 ……何にしても、無駄に元気な何時ものコイツだと言う事か。

 この俺に取っては平穏で穏やかな夜。しかし、彼女に取っては夜空の散歩と言う非日常の夜。こう言う時間が後どれぐらい残されているのか。柄にもなく、少しセンチメンタルな事を考えた瞬間、目当ての物を探し当てたハルヒが元の体勢へと復帰する。
 もっとも、彼女の手の中には十センチ程の……大体の人がその青い箱を見れば、その中には某かの宝飾品が入っているんだな、と分かる箱を手にしているので、完全に元の形に納まったと言う訳ではないのですが。

 まぁ、何と言うか……(てんてんてん)と言う、少し煮え切らない、如何にも場馴れしていない感を醸し出しながらも、

「二日ばかり早いけど、メリークリスマス」

 用意していた台詞を口にする俺。
 自らの取り出したその箱を訝しげに見つめるハルヒ。ただ、どうにも反応が鈍いのだが、それでも、その辺りもある程度は想定済み。
 青い箱と俺の横顔の間で一瞬、視線を
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