第6章 流されて異界
第145話 星に願いを?
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文的に対処するのなら、こちらも同じように対処するだけ。
二人の微妙な距離感は、例え彼女が、今現在自らの腕の中に居たとしても変わらないし、変えてもいけない。
「普通に考えたのなら、こんなに高い位置で寒くないはずはないでしょ」
ほら、あの半島は牡鹿半島で、その傍にあるのが金華山でしょ。それから、それから……。
いちいち指差しながら日本地図、東北地方の太平洋岸の地名を挙げて行くハルヒ。何にしてもコイツの頭が良い事は理解出来た。少なくとも、中一、一学期の期末試験で牡鹿半島が答えられずに予定の得点を叩き出せなかった俺よりは。
「そうか……」
それは良かった。
この状態。二人の距離感が微妙な均衡の上に成り立っているのなら、下手に刺激をするとすべて崩壊して仕舞う危険性すら存在する。そう考え、当たり障りのない答えを口にする俺。
もっとも、彼女の答えも当たり前。ここはおそらく上空三千メートル以上。大気は薄く、気温もマイナス二十度ほど……だと思う。このような場所に居るのに、今の彼女は紅いニットのセーターにフレアのスカート。黒のレギンスとふわふわのファーに包まれたショートブーツ。せめてコートぐらい着てくれても良かったのに、手袋やマフラーすら付けず。
どう考えても見た目重視で、極寒の場所にこれから向かう人間の出で立ちとは思えない状態で旅館を出て来て仕舞ったので……。
結局、普段通りに仙術で造り出した温かな空気の球体で身を包む事により寒さを退け、薄い酸素濃度による高山病などを防ぐ事となったのですが。
有希やタバサの時だってやっている事に大きな違いはないのに、何故かハルヒに関してだと少し愚痴めいた感情が強くなる。これも、コヤツの普段の態度に問題がある所為なのですが……。
自然と会話が途絶えた。その瞬間、北から吹き付けて来る強い風が、普段よりもはっきりと聞こえる。東北地方に相応しい強い冷気と、乾と言う属性を得たソレが俺と腕の中のハルヒに纏わり付き、二人分の髪の毛と、俺の羽織ったコートの裾を揺らしてから後方へと過ぎ去って行った。
ここは上空。地表部分では冬の夜に相応しくないぐらい、風のない……冷たいけれど、穏やかな夜だったのですが、流石にここはそう言う訳にも行かなかったと言う事なのでしょう。
「ねぇ、今回は一体何時ま――」
冬に属する月の眼差しと風の声。そして、互いの温もりにのみ支配された時間に慣れなかったのか、何かを問い掛けようとして、しかし――
彼女から発せられた言葉は明確な意味を持つ前に、口元のみを白くけぶらせるだけに留まる。
ただ、成るほど……。
「なぁ、ハルヒ――」
彼女が何か言い掛けた事は軽く無視。先ほどの彼女の言葉の続きを想像すると、おそらく、その内容は今の俺には答
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