14話
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追求せず素直に答える。
「……僕から見れば元気だと思いますよ。最初の頃は周りがほぼ異性しかいないということもあって、苦労していることもありましたが今は随分と馴染んだと思います」
鬼一のその言葉に鈴は複雑な気持ちを抱く。元気なのは嬉しいが他の女と仲良くするのは嬉しくなかった。
「……仲の良い女子とかはいるの?」
鈴は思わず暗い言い方になってしまったが、鬼一はそれに気づいていない。
「親しい女性の方……親しいかは僕から見ると正直微妙なところですが、幼馴染の方とはよく行動を共にしてますよ」
その鬼一の言葉に鈴の温度が下がる。そして鬼一は自分の失言を悟る。目の前の少女は一夏と親しい、というよりもそれ以上の感情を持っていることに気づいたからだ。
「だから……でだな……」
箒の声が鬼一の耳に入り込んでくる。今日は確か、一夏さんと篠ノ之さんがトレーニングしていたな、と鬼一は思い出す。そして同時に気付く。割と最悪なタイミングで出てきやがったな、と。
いや、まだ距離はある。それならそれとなく距離を離せばとりあえずは大丈夫だろうと鬼一は考えた。そして、その考えが愚かだということにすぐに思い知らされる。
「……ら、……わ……だよ」
険しい女性の声の次に聞こえてきた男性の声に鈴は一瞬足を止める。鈴にとってはなによりも聞きたかった人の声だ。その声に突き動かされるように走り出す。
「……やってしまったな、僕」
鬼一の呟きなど鈴は気にしていられない。全力で走る。ただ、顔と声が聞きたかった。自分と顔を合わせてどんなリアクションが出てくるのか、自分のことを覚えてるかな、覚えていたら嬉しいな、様々な思考と感情が鈴の中で混ざり出す。
「いち、―――……っ!?」
裏返った声で一夏を呼ぼうとした瞬間、目の前の光景を見て言葉が止められる。そして、一瞬理解出来なくて足が止まり、最後には理解して驚きの感情が溢れ出す。鈴の感情が大きく揺れ動いたのは後ろにいた鬼一にもなんとなく分かった。
「一夏、いつになったらイメージが掴めるのだ。ようやく進んだのにまた同じようなところで詰まっているではないか。」
「あのなあ、お前の説明が独特すぎんだよ。いい加減擬音での説明を止めてくれよ」
「……くいって感じだ」
「だからそれがわからないんだって、鬼一の説明の方がよっぽど―――おい、待てって箒!」
鬼一はもう目の前の光景を見ていられなかった。右手で自分の視線を遮っている。一夏と箒のやり取りが進むごとに、目の前の少女の背中が小さくなっていくのが見て取れた。それだけで鈴がショックを受けているのは分かる。
固まってしまった背中に声をかける。
「……鈴さん、行きましょう。総合事務受付もこ
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