暁 〜小説投稿サイト〜
世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
14話
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うから私のことは鈴でいいわ。こっちに転入してきたんだけど、本校舎1階総合事務受付ってところを探しているところだったのよ。ここ広すぎない?地図見ても分からないし、迎えはこないって言われるし、本国は私1人に行かせるしでもう散々!」

 少女の愚痴混じりの声に鬼一は苦笑する。愚痴を聞く方は得てして不快な気持ちになりやすいが、目の前の少女の愚痴からはそういったものを感じない。まっすぐで裏表のない人なんだろう、と鬼一は考える。

「確かに。夜で分かりにくいですし、ここは広いですしね。よろしければご案内しましょうか? 僕も用事がありますし」

 鬼一の言葉に鈴の表情が明るくなる。鈴にとっては天からの助けも同然であった。あまりのIS学園の広さに思わずISを起動させて空から探してやろうか? と考えるくらいには彼女はイラついていたのだから。

「ごめん、悪いんだけどお願いしてもいいかしら?」

 鈴の鬼一に対する第1印象はとても不思議なものだった。

 彼女は『歳をとっているだけで偉そうにしている大人』や『男っていうだけで偉そうにしてる男』が大嫌いなのだ。そして、男の力などは児戯で女のISこそが正義。という考えを少なからず好んでいる人間なのだが、目の前の少年はどうもそれとは無縁の存在に見えた。

 普段の鈴からすれば『生意気』と感じても不思議でもないのだが、そういった感情は抱かなかった。

 代表候補生として、女性というよりも1人の人間としての自分に一定の敬意を払っているように鈴は感じる。しかし、鬼一という人間は男の腕力というものや女のIS、というものに対して重要視してないように見えた。

 鈴は中国という世界で一番人口の多い国、IS操縦者の人口が多い場所で僅か1年で代表候補生に上り詰めた。上ることで様々な人間を見ている。

 例えば男の政府関係者。

 代表候補生である自分を恐れているような、己の身の保身しか考えていないような下衆な人間。そういうのとは対極の存在だと思えた。この少年は安直な恐怖とか保身とは縁のない人間。

 2人は無言で並んで歩く。

 鬼一は特に気にしなかったのだが、鈴はどうにもこういった空気が好きではない。必然的に鈴から鬼一に話しかける。

「ねぇ、織斑 一夏は元気?」

「はい? 鈴さんは一夏さんとお知り合いなんですか?」

 鈴の一夏に対するその呼び方は鬼一から聞いても親愛の籠った言葉だった。少なくとも親しい人間に対するそれなのはすぐに理解出来た。

「んー、まぁ、昔ちょっとね」

 別段隠すことでもないのだが、思わず濁した言い方になってしまう。ちょっと気恥ずかしかった。
 鈴のその態度に鬼一は、一夏に対して悪い感情を持っていないということだけは分かった。昔のことに関しては深く
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