14話
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て次の言葉でわたくしは自分でも驚く程の激情が溢れ出る。
「いいよ、適当に捏造しておくから。よし、織斑君に惚れたからってことにしよう」
「……ふざけないでくださいまし!」
賑やかな会場が一瞬で静まりかえる。
クラスメイトの皆さんが何事かと振り返った。目の前の人がわたくしの怒りに怯えたのか涙目になる。
背後の鬼一さんがどんな顔をしているかは分からない。反射的に、思わず声を上げてしまった。そのことに自分でも驚いてしまう。自分がこんな声を出せることに。
左肩に何かが置かれる感触。それに振り向くとあの人の右手が置いてある。視線を上げると苦笑しているような表情をしている鬼一さん。
その視線に自分の中にある激情が急激に小さくなる。変わりに猛烈な羞恥心が湧き上がった。
鬼一さんがわたくしをかばうように、他のクラスメイトの視線を遮るように1歩前に出る。
「冗談でもそういうことを言うのはどうかと思います。僕たちくらいの年齢で異性の問題はデリケートでしょうに。さて、代わりに僕がコメントをしましょうか? 2人目の男性操縦者ならそれなりに面白いものになると思います。どうせ捏造もするでしょうしね。ちなみに僕は慣れているんで好きなようにして結構ですよ?」
最初は凍っているクラスメイトを落ち着かせるように、後半は新聞部の方だけに聞こえるよう皮肉を漏らした。鬼一さんの顔は多分笑っているけど……怒っているようにも感じる。
「……え、えーっと、コメントはやっぱいいや。せっかくの専用機持ちだからツーショットだけもらってもいいかな? 写真は後で2人にも渡すからさ」
その言葉に嬉しくなる。鬼一さんと? ツーショット?
「……まぁ、僕は構いませんよ。セシリアさんは大丈夫でしょうか?」
鬼一さんはそういって後ろにいるわたくしを見る。穏やかな横顔。その顔に声が出すことが出来ず、頷くだけになってしまった。
鬼一さんが私の右に並ぶ。
「あっ、えーっとね、せっかくだから握手とかしてもらえると嬉しいかなー……」
オーダーが出される。が、その声が小さくなっていったのはあまり強気にでれないからだろう。その声に鬼一さんは一瞬固まり、その後ゆっくりと右手の手袋を取り外す。……なんでいま、固まったのか。その意味をわたくしはわからなかった。
身体ごとわたくしに向き直り右手をおずおずと鬼一さんは差し出してくる。
視線を鬼一さんの顔に向けると僅かに顔が赤い。そういえば異性に対する経験がほとんどないと本音さんが教えてくれた。ということは不慣れだから恥ずかしいのだと考える。
それなら、年上として堂々とした振る舞いでリードしてあげる。
わたくしの右手と鬼一さんの右手が触れ、やさしく握ってあげる。
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