暁 〜小説投稿サイト〜
世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
14話
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の近くです」

 そう声をかけると鈴はゆっくりと鬼一の後ろを歩き始めた。表情は見なかった。見たとして、なんて声をかければいいのか鬼一には分からなかったからだ。

 その後、総合事務受付に案内を終えたとき、顔を上げた鈴は笑顔で鬼一にお礼を述べる。

「鬼一、ありがとね。これは貸しにしといていいわよ」

「別に構いませんよ。僕も用がありましたので」

 そう言って2人は別れた。それぞれ全く違う手続きを行わなければいけない以上、窓口が違ったからだ。

―――――――――

「というわけでっ! 織斑くんクラス代表決定おめでとう!」

「おめでと〜っ!」

 織斑さん、鬼一さん、わたくし、篠ノ之さん以外のクラスメイトがそれぞれ手に持ったクラッカーを甲高く鳴らす。わたくしと鬼一さんは離れた席に2人で向かい合って座り、織斑さんや篠ノ之さん、そしてクラスメイトの皆さんが1箇所に集まっている場所を眺めていた。

 今は夕食あとの短い自由時間で、場所は寮の食堂。わたくしたちのクラス、1年1組は全員この会に集まっており、大いに盛り上がっていた。この盛り上がりは嬉しさとかよりも、物珍しさなどが先行しているようにも感じる。しかし、よく見てみるとわたくしたちのクラス以外の人も参加しているようだった。見たことのない顔があちこちで見える。

 壁には『織斑一夏クラス代表就任パーティー』と手作り感溢れる張り紙と、食堂の一部に装飾まで施されていた。一体どこからこれを行う時間を捻出したのだろう?

 わたくしはそれから視線を切り目の前の男の子に向ける。わたくしの友人にしてお互いの理解者、そして今は―――ちょっとだけ淡い気持ちを抱いている方。

 鬼一さんは頬杖を付き左手の手の甲に顎を乗せ、ボンヤリとした表情でクラスメイトの盛り上がりを眺めていた。表情がどことなく重そうで、何度も瞼が落ちそうになっている。お仕事が終わったらしく安心したのか、普段の表情や保険室での表情とはまったく違うもの。
 薄手の黒い手袋に包まれた左手を見る。その内の1本はもう、親から頂いたものじゃなく、人工的なそれ。

 戦えば必ず傷つく、鬼一さんはそう言った。それはわたくしも思いますが、今胸の中にある感情がそれを否定しようとする。この人に戦わせてはいけない、と。

 指のこともそうだが、織斑さんとの戦いで見せた狂気とその後の保険室でのやりとり、わたくしはそこで思った。この人はきっと壊れるまで、自分が無くなるまで戦い続けるのではないかと。そしてその異常性にこの人は気づかずに生きている。

 この方はIS学園で休めているのだろうか? 織斑さんは織斑先生や篠ノ之さんがいるからまだ落ち着くことも出来ると思うが、この方には頼れる人が近くにいない。今となっては住む世界が違う
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