巻ノ四十七 瀬戸内その七
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「考えていかねばならぬ」
「どうしていくか」
「そのことを」
「家と民を守る」
これは絶対にというのだ。
「それを念頭に置いてな」
「どう動くかをですか」
「天下の流れを見て」
「それを決める」
「それも大事ですな」
「これから海に出るが」
幸村はここで例えた。
「しかしな」
「海で、ですな」
「舵取りを間違えたなら」
「その時はですな」
「舟ごと沈んでしまう」
「そうなってしまいますな」
「だからな、天下の流れは見誤ってはならぬ」
絶対にというのだ。
「家と民を守る為にな」
「では、ですな」
「義はそこにありますな」
「殿が常に大事にしておられる」
「それは」
「そうじゃ、そして一つ大きな道が天下にあり」
それはというと。
「大義もあるが」
「その大義もですな」
「是非、ですな」
「守り進む」
「そうありたいですな」
「拙者は家も民も大義もな」
その三つ共というのだ。
「守っていきたいがな」
「若し家と民が守れれば」
「その時は」
「大義にのみ生きていたい」
己の欲ではなく、というのだ。
「そうしたい、具体的には」
「それは何かというと」
「大義は」
「それは」
「恩に恩で報い不義を許さず」
幸村は十勇士達にその大義のことを話した、そのうえで。
そしてだ、こう言ったのだった。
「誓いを守るべきなのじゃ」
「では」
「殿はその為に戦われますか」
「そして生きられるのですな」
「人としてどう生きるべきかもわかったうえでな」
これが幸村の言葉だった、そのうえで。
幸村は酒を飲みだ、その日は刺身を一切れも残さず十勇士達と共に楽しんだ。そのうえでその夜は寝てだった。
日の出と共に波止場の船に乗り込んだ、その船は中々の大きさで筋骨隆々の日に焼けた男達が乗り込んでいた。
その男達の中からだ、とりわけ大柄で髭の濃い男が幸村のところに来て言って来た。
「これから博多まで頼むな」
「うむ」
微笑んでだ、幸村も男に応えた。
「こちらこそな」
「こっちは村上の人間だ」
即ち村上水軍のというのだ。
「瀬戸内の海は庭みたいなものだ」
「だからだな」
「任せてくれよ」
「何もかもだな」
「昼も夜も進んでな」
そのうえでというのだ。
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