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花火の下で
4部分:第四章
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第四章

 幸の方からだ。こう京に言ってきたのである。
「ねえ、今夜ね」
「今夜?どうしたんだよ」
「今日も花火観るわよね」
 幸が言うのはこのことだった。
「その時にね」
「何かあるのかよ」
 京は今はきつね蕎麦を食べている。揚げを食べつつ言うのだった。
「夜に」
「ちょっとね」
 くすりと笑って応える幸だった。
「あるのよ」
「そうか。実は俺もな」
 そしてだ。京もだった。
 思わせぶりに笑ってだ。こう幸に言ったのである。
「実はあるんだよ」
「何があるの?」
「まあその時に言うな」
 その笑みでまた言う京だった。
「その時にな」
「そう。その時になのね」
「ああ、それじゃあ夜な」
 こうしてだった。二人でだ。思わせぶりに笑い会ってそのうえで今は何も言わなかった。そうしてだ。二人は今は長野名物の蕎麦に、林檎も食べていた。
 夜になるとだ。二人はだ。スキー場に出た。
 夜のスキー場は灯りに照らされ白い絨毯も今は夜の暗闇の中から灯りの淡いオレンジの光に染められている。その中にだ。
 二人はいてそこでだ。花火を見ていた。
 花火は次々にあげられ夜空に赤や青、白の大輪を咲かせていく。その大輪は様々な形で夜空に咲き冬の夜空を飾っていた。
 それを見上げながらだ。幸は京に言った。
「あの花火が全部なのね」
「ああ、俺の会社でな」
 作っているまさにそれだとだ。京は笑顔で話した。
「作ってるんだよ。今のあれだってな」
「そうよね。全部ね」
「俺達が作ったんだよ」
 京もその夜空を見上げて次々に咲く大輪を見ながら幸に話す。
「俺の子供みたいなものだよな」
「そうね。京が一生懸命作ったから」
「いい仕事だよ。花火職人ってな」
 京はその目を細めさせていた。そのうえでの言葉だ。
「ただな。それでもな」
「それでもなのね」
「一人じゃ寂しくてな」
 今度は幸の方を見て。そして言ったのである。
 そうしてだった。懐からだ。
 あるものを出してきた。それを幸に差し出す。それは紫のビロードの小箱だった。
 その小箱を幸に差し出してだ。彼は言うのだった。
「ええと、これな」
「私と同じものよね」
「幸と同じっていうと」
「はい、これ」
 幸はだ。満面の笑顔でだ。
 京と同じだ。紫のビロードの小箱を出してきた。それを見てだ。
 京はだ。少し素っ頓狂な感じの顔になりこう言ったのである。
「まさか。食ってる時に言ってたのは」
「同じだったのね」
「そうだったんだな」
 そのことをだ。二人で言い合ったのだった。
「同じこと。考えてたんだな」
「そうね。けれどね」
「悪い気はしないな」
 微笑みだ。京は言った。
 そうしてだ。幸に言うのだった。
「じゃあ俺でよかった
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