第1話
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目を覚ましたらしい。
トロンとした寝ぼけ眼で左右をキョロキョロし、暢介を目が合うと、目が覚めたのか。
凄い勢いで立ちあがると顔を真っ赤にして弁明を始めた。
どうやら、眠っている所を見られたのが恥ずかしかった様だ。
「す、すいません!」
「い、いや……別に謝らなくても……」
そう言っている暢介自身も現状を理解できていない。
何故自分は、見覚えのない場所にいるのか。
何故自分は、スーツ姿でいるのか、記憶の中での自分の最後の服装は寝間着だったはずだ。
もしかしたら休みの間の記憶が抜けてるだけで、実際は休み明けで外回り中に倒れたとか。
……いやいや、確かに、たまに記憶が飛んでる事はあっても土曜と日曜の2日間の記憶が抜けるという経験は無い。
「あのさ……ここってどこなのかな?」
場所確認をしたい暢介は、女性に問いかける。
女性は顔を真っ赤にしたままであったが答える。
「ここは河内郡温県孝敬里ですよ」
「え?」
聞いた事の無い地名に暢介は混乱した。
少なくとも自分の住んでいる場所、務めている場所の近辺にその様な地名は無い。
しかし……
(会話が通じているって事は、日本なんだよな……?)
女性との会話が成立している以上は、互いに日本語で話しているという事のはずである。
「……あっ!」
突然、女性が大きな声を出したので暢介はビクッと身体を震わせた。
「な、何かな?」
「あなたが目を覚ましたら、会っていただきたい人がいまして……起きれますか?」
「あぁ、大丈夫だよ」
そういって寝台から降りる暢介。
並んで立ってみて分かった事だが、女性の身長は暢介の肩ほどだった。
「それで、会っていただきたい人ってのは?」
「僕の母です」
その言葉に暢介は頷く。
「ではいきましょうか」
そう言い、女性は歩き出した。
暢介は女性の後ろを歩く。
部屋を出て、少し歩いた所で女性は何かを思い出し、歩を止めて暢介の方を見る。
「そう言えば、まだ名前を言っていませんでしたね」
「あぁ……そう言えば、そうだね」
よく考えると、目覚めてから一度も名前を聞いていなかった。
いつまでも知らないままでいる訳にもいかないだろう。
「じゃあ、俺から言っておこうかな。俺は鷺島暢介」
「鷺島暢介……鷺が姓で島が名で暢介が字ですか?」
女性の言葉に暢介は目が点になる。
姓名は分かるのだが、字という存在が分からなかった。
「いや。姓は鷺島で暢介が名だよ。字ってのは無いんだけど」
「字が無い? 珍しいですね」
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