13話 楯無戦
[10/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
を逸していることを。自分の中にある感情に蓋をしていることを。
ふと、簪はそこで気付く。
遠い昔、自分の姉と模擬戦を何度かしたことあった。その時から姉の強さは本物と言っても間違いないものだった。
だけど、姉の本気を見たことあっても自分がその本気を相手にしたことは終ぞなかった。
つまり、少なくとも、今、姉の目の前で戦っている少年は姉から見て本気で戦う価値があるのを認めたということ。そのことが簪をイラつかせた。自分がそこにたどり着けなかったことも含めて。
心が挫けそうになった。
―――……諦めてしまえばいいのに……諦めて……。
簪自身に悪意などはない。だけど、そう思わずにはいられなかった。
IS乗りなら大多数が諦めるほどの現実。現役の国家代表が相手なら不思議なことではない。それだけ国家代表とそれ以外の差が大きいのだ。代表候補生から見てもそれだけ隔絶した差がある。
だけど、目の前のモニターに映っている少年は微塵も諦める様子はない。試合時間は既に15分が経過していた。それだけ時間があれば彼我の戦力差の把握はできるだろう。どれだけの開きがあるのかも含めてだ。
鬼一が細かく変化して楯無に対応しようとしていることは簪でも分かった。しかし楯無の壁を突破することは出来ない。それだけ楯無の力は上なのだ。
そんな事実の中でも鬼一の意志は決して折れない。むしろ時間が経つ度に目の光が強くなっていく。
―――……あの人の力に抵抗しようとすることも無駄なのに……なんで、なんで折れないの……?
ただただ不思議そうに見つめ、簪は試合が終わるまでそのモニターから目を逸らさなかった。
―――――――――
更識 楯無の本気というのは例えどんな相手でも慎重に、丁寧に、真綿で首を締めるようにジリジリと相手を圧殺することにある。本質的には相手が対応しにくい最小限のリスクで試合を進めることだ。自分が優勢を築くことで始めて相応のリスクを背負って攻める。
この戦い方を完成させることで格下相手に万の一にも敗北しないようにさせ、同格や格上相手にはとにかく粘り強くしぶとく試合を進めるようにしている。踏み込んだ言い方をすれば『負けない』『相手に勝たせない』戦い方なのだ。
鬼一も楯無の戦い方に触れて、それが今の自分にとってどれだけ嫌なことか理解している。楯無の戦い方は間違いなく厄介の一言に尽きるだろう。ある意味では誰よりも勝ちに、生きることに拘っているようにも鬼一は感じた。
究極的なことを言えば、相手を倒す、勝つということは相手にとって嫌なことをし続ければいいのだ。そう言う意味では楯無の本気はそんな戦い方だった。
その事実に鬼一は腹を括る。
この戦いにおいて、自分は楯無に為す術
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ