13話 楯無戦
[6/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
状況を変えるだけなら高速戦闘から離脱すればいい。しかしそれは撤退や離脱ではなく、苦しさから逃げるだけの『逃走』でしかない。一瞬でも姿勢が後ろ向きになってしまえば、その試合中に切り替えるのはもう無理だ。後ろ向きな姿勢で打開策を閃いたり勝利に執着することはもう出来ない。
つまりは敗北に一直線ということだ。それは絶対に避けなければならない。
―――向こうにとって有利なはずなのに、リスクを上げてこない。本当に堅い! キツイ……。かなり不利だけど、今はこの展開から逃げるわけにはいかない。それなら、集中を維持して突破口を探るしかない!
楯無は冷静に鬼一を分析する。自分の有利を理解しており、動きにも余裕があるからこそ相手のことを考ることができるのだ。
―――……鬼一くん、あなたは今大きなミスをしたわ。確かに大きな出費ではあったけど、ここは霧纏の淑女の最大防御力を把握するだけで満足するべきだったのよ。あなたならその情報だけでも後の展開を考えることはできたわ。
さらに、この高速戦闘にあなたの主体性はほとんどない。一見5分に見える展開だけど主体性のない、相手に依存する戦術なんて相手にナイフを渡すような行為よ。
相手の意思に依存してしまうと、自分の意思で展開を進めることができないため本人が予想するよりも遥かに疲労が蓄積される。しかも楯無はまだ本格的に攻めに切り替えていないのだ。この一定した状況が続く以上、必然的に通常よりも体力・精神力を消耗させられる。
―――リスクを最小限に、無駄なく戦っている。慎重というよりもこれは丁寧という方が正解か。リスクの危うさを知り尽くし、己と相手との技量差を理解しているからこういうことが出来るんだ。
……疲れてきているし、この人相手にこういう戦い方するのは間違いなく割に合わない行為。だけど、ここはまだそれが必要な状況。もう1歩踏み込んでより高度な情報を引き出す!
―――ふーん……? リスクの少ない射撃戦・技術勝負は避けるのにリスクの大きい近接戦・メンタル勝負は受けて立つんだ。近接戦で大切なのは確かに体力だけど、でも、恐怖の中を突っ走れる勇気、メンタルが無いと成り立つものじゃないからね。……でも、おねーさんはそっちでも強いわよ!
「くっ……!」
苦しい展開の中から1歩踏み込んだ分だけ両者のリスクは跳ね上がる。特に仕掛けた側の鬼一はある意味ではより厳しい展開にならざるを得ない。だが、そんな状況でも楯無と霧纏の淑女の情報収集は怠らない。今、この状況で得られる情報というのは楯無が思っている以上に大きいものだと鬼一は判断しているからだ。
―――見逃すな。集中を切らすな。IS学園最強? 現役国家代表? どんだけ強かろうがこの世界のどこにも『無敵』なんて存在しない! だったら必ず
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ