第九話 南西諸島攻略作戦(後編)その2
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飛行甲板を水平にし、体勢を保ちながら、艦載機を発艦させた。
「うまいわよ、紀伊。」
瑞鶴の言葉に紀伊は頬を染めた。
「ありがとうございます。」
「よし、発艦は完了したわね。では護衛艦隊と第七艦隊はこれより水上部隊の援護に向かうわ、全艦隊、出撃!!」
ビスマルクは叫び、全艦娘は水面をけって、走り始めた。
「ねぇ、紀伊。」
並走しながら瑞鶴が話しかけた。
「さっきはああいっていたけれど、どういうことなの?まさか今交戦している機動部隊のほかにも大規模な艦隊がいるっていうわけじゃない・・・よね?」
「確信はできないんですが、敵の規模からして、伊勢さんたちと交戦している部隊だけではないと思うんです。わざわざこちらに制圧させてまで敵がもくろんでいることは――。」
「敵の狙いは本島防衛ではなく。積極攻勢による私たちの殲滅だということですか?」
榛名が左から滑ってきて二人の会話に加わった。
「わかりません。でも、敵の立場になって考えてみると、何となくそういう狙いがあるんじゃないかと思うんです。なぜなら飛行場や司令部は復旧がききますし、海上輸送路を封鎖してしまえば、孤立したヤマトを仕留めることはたやすいからです。なので、奪還は後回しにしてもいいはず。それよりも作戦行動ごとに分かれて進撃してきた私たちを各個撃破できる機会の方がはるかに重要だと思ったんです。」
「ヤマトの持っている通常艦艇では駆逐艦はともかく、戦艦級の深海棲艦には歯が立たない。艦娘さえ撃破できれば、制海権を失ったヤマトは自然と消滅する・・・それが狙いってことね。」
「はい。」
「そうはさせないわ!!もう二度と・・・・私は自分の国が負けるところを・・・・消えてしまうところを・・・・見たくはない・・・・!!」
「瑞鶴さん?」
紀伊は瑞鶴の横顔に悲愴な決意が漂っているのを見て少し驚いた。榛名も顔を引き締めて瑞鶴に話しかけた。
「私も瑞鶴さんと同じです。もう見たくはないんです。二度と自国の人々が悲惨な戦渦に巻き込まれないために・・ここで殲滅しましょう!」
紀伊の行足が緩んだ。二人は速度を落とさずに疾走をつづけていく。紀伊は一瞬二人が自分の手の届かない遠くに行ってしまったような虚脱感を覚えていた。前世の記憶によって今二人の脳裏には壊滅した自国の部隊や戦渦にさらされる国民のかつての姿が写っていたに違いない。それは紀伊が味わったことのない次元のもの、絶対に触れることのできない世界だった。
(でも・・・・いいえ、私にだって守るべきものはある。それは、過去じゃない。今、この時、この瞬間、そしてこれからの未来を!!)
紀伊は強くうなずくと、速力を上げて、二人を追っていった。
1時間後――。
水上部隊の面々は満身創痍のまま海上を漂泊していた。周囲には敵艦はなく、海上を燃えがらや艦の
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