12話 日常回
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きていて人の反応を楽しんでいるなんて、よほど人が悪いとしか言えない。楯無の中身は悪魔だと言われても不思議ではないと鬼一は心の中で呟く。実際に言ったら報復が怖いので絶対に口にしないが。
「んー、寝ていたんだけど、情熱的な視線を感じたからそりゃ起きるわよー。」
「あの時僕ほぼ一瞬しか見ていませんよ!? そして情熱的な視線なんかで見ていませんっ!」
せっかく心拍数が平常に戻ったというのに心臓が高鳴っているのを自覚する。頭がドクドクと脈打っているような錯覚を鬼一は覚える。錯覚でもなんでもなく事実なのだが。全力で突っ込んで疲れた鬼一は肩で息をする。
「鬼一くんって紳士なんだ。私が落とした毛布をかけ直してくれたしねー」
一瞬ではあるが間延びした声ではなく、あまり聞かない真面目な楯無のそれに戻った。最後はまた間延びした気の抜けた声だったが。目が覚めたというより鬼一は楯無の貴重な本音のような気がした。
「……っ」
鬼一は楯無との付き合いは短いものだが、楯無の人となりはなんとなく分かっているつもりだ。
楯無は声、具体的には口調や声色でなんとなくその意図が読める。表情で理解しようとすると表面的なことも理解できない。
基本的には面白ければそれでいい、というスタンスなのはすぐに理解できた。だが、更識 楯無という人間は本音や本心を伝えるときには、それまでの会話や状況などお構いなしに真面目になる傾向がある。それを理解した後の鬼一は、こういう楯無に何も言い返すことが出来なくなった。毒が抜ける、とでも言えばいいか。
―――……普段あれだけふざけてたりおちゃらけている癖に、この人の、こういうところは苦手だ……。
苦手だと思いながらも鬼一は楯無のことは嫌いになれない。不快な感情ではなく、どうしていいか分からなくなるから苦手なのだった。
突然黙ってしまった鬼一のことを不安に思ったのか楯無は恐る恐る鬼一に声をかける。
「……あれ? もしかして鬼一くん怒っちゃった?」
間延びしたものではなく、普通の楯無のトーンに切り替わる。楯無には鬼一に対して前科があるのだ。
1度だけため息をついた鬼一は先ほどよりも、ややトーンの落とした声で応える。
「怒っていませんよ。とりあえずたっちゃん先輩、早く着替えて下さい」
「はーい」
鬼一の言葉に今度こそ楯無は素直に応じた。
ガチャン、と音を立ててバスルームの扉が閉まる音がしたのを確認した鬼一はゆっくりと後ろに振り返る。そこには楯無の姿はなく、大人しく着替えに行ってくれたことにホッとする。
汗をかいてしまった鬼一も、新しいタオルを1枚取り出し身体を拭く。拭いたあとは制汗スプレーで全身に吹き付け、そしてすぐにIS学園の制
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