12話 日常回
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中で聞いていられなくなったのか、それとも暴走し始めた鬼一を不憫に思ったのか、本音は鬼一の言葉を遮って止める。これ以上言わせたら何が出てくるか分からないのもあった。
本音は背中が痒くなるのを自覚する。人の恋愛事情とは聞いててここまで恥ずかしいものだったか。
「……っえ? ……―――っ!?」
自分が盛大な自爆を決めたことを自覚した鬼一は湯気が出そうなほど、更に顔を赤らめ両手で顔を覆う。表情は見えなかったが、鬼一は既に泣きそうな状態だった。
―――教室や試合だとあんなに怖い顔を見せるのに、こんなに可愛らしい一面もあるんだー。
その言葉は口にせず心の中で呟く。これを言ってしまったら目の前の年下の少年に止めを刺すことになるからだ。流石にそれは本音は控えた。
「まぁまぁ、つっきー、このことは誰にも言わないから安心してよー。私の胸の中に留めておくからさ」
本音からすれば別に恥ずかしがる感情でもないと思う。2人とも美しいのもそうだが、人として立派な部分が多いのだから。好きになっても不思議ではないと考えた。
「それとつっきー、好きって感情は別に持っちゃいけないものでもないんだからさー。そうやって自分の感情を否定するのも違うと思うよ」
そもそも鬼一はその感情を持て余していることを本音はなんとなく理解した。その『好き』という感情は自分にとって不要なものだと感じているようにも思えた。その原因がなんなのかまでは本音は分からなかったが。
――――――――――――
「落ち着いたつっきー?」
時間にしたらそこまで長い時間ではなく、10分も経っていないだろう。
落ち着いた鬼一は静かに深呼吸をする。
「本音さん、取り乱してすいませんでした」
眼鏡を外し目元をハンカチで拭いながら鬼一は本音に謝る。真っ赤だった顔も今は普通に戻っていた。
「本音さん、え、と、その、なんて言えばいいか……」
鬼一に言いたい言葉をなんとなく理解した本音は優しく語りかける。
「うん、誰にも言わないから」
鬼一はその言葉に安堵したように肩から力を抜く。ギシ、と音を立てて椅子に背中を深く預けた。
せっかくの休日なのに散々な1日のような気がするな。鬼一はそんなことを考える。しかもまだ1日の半分も終えていない。そしてこれからの問題に鬼一は頭を抱える。
「……これからたっちゃん先輩と模擬戦じゃん、僕……」
耳を澄まさないと聞こえないような小さな声で呟く。これからどんな顔で会えばいいか、どうすればいいか分からない。
「ありゃりゃ、たっちゃん会長とISで戦うんだー。延期とかはダメ?」
「先輩にも予定がありますし、これは自分から頼んだことですので……」
その心
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