12話 日常回
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識 楯無の妹の存在を。
そして本音の声のトーンで自分が失敗したことを理解した。具体的な事情に関しては全く分からないが、だけど、本音の表情が優れないことから触れてはいけない内容だったかもしれない、鬼一はそう感じた。
本音の悲しげな、でも確かな親しさを感じる。つまり本音自体は簪と仲良くなりたい、もしくは仲が良かった、という予想がついた。でも、自分はこれ以上軽々しく踏み込むのはいけないことだけは分かった。
「……本音さん、すいません。僕が触れていい内容ではなかったみたいですね」
申し訳なさそうに鬼一は謝罪する。
「つっきーのせいじゃないよ。私こそごめんなさい」
そこで話を区切った本音は明るい表情を取り戻して、話題を変える。
「ところでつっきー、中学からあっちこっち世界中に行っていたんだよね?」
鬼一は本音の強引な話題変えに乗っかる。自分もこんな雰囲気を望んでいないからだ。本音から話そうとしないなら自分が目の前にいる人を追い込んでまで聞き出そうとは思わない。
「そうですね。年間で20近い大会に出場していたので先進国は一通り回ったと思います」
右手を顎に当てて回った国々を思い出す。
「へー、観光とかもしてたのー?」
「いや、そんな暇はなかったですね。大会やイベントが終わったら即帰国です。でも大会やイベントは凄い楽しかったかもしれませんね。今振り返ると」
当時は大会で結果を出すことに必死だったし、プロとして地位向上や人口を増やすためにイベントにも多く出演していた。今なら余裕が少なからずあるから楽しめるかもしれないと思った。参加することはもうないだろうが。
「e-Sportsのトッププレイヤーって異性にもモテる、ってこの前ネットに書いてあったけどそれってホントー?」
いつの時代でも異性事情、恋愛事情を人は好きなのだ。女尊男卑という世界であってもだ。いや、むしろ女尊男卑だからこそか。
「……否定はできないですね。海外のトッププレイヤーとかだと、美しい女性を数人連れている人もいらっしゃいました。女性のトッププレイヤーも数は少ないですけど恋人はいる方は多いですね」
国別対抗戦の予選であの女性も夫も子供もいたし、女遊びが激しいプレイヤーもいたが、トッププレイヤーなだけあってとんでもない強さだった。向こうからすれば鬼一もとんでもない強さの持ち主ではあるが。
「つっきーもe-Sportsのトップだったんだよね〜? 随分とおモテだったんじゃー?」
本音はニヤニヤと楽しそうな表情を浮かべる。本音のその言葉に鬼一は両手を上げて苦笑した。
「いやいや、僕は未成年ですからね。僕に絡もうとした方もいらっしゃいましたが、周りの大人たちに助けられましたね」
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