12話 日常回
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月夜 鬼一の朝は普通の学生から見れば極めて早い時間に始まる。特に日曜日という学生にとっての天国と言える1日であってもだ。
ベッドの脇に置いていたデジタル時計から電子音が鳴り響く。が、僅かワンコールでその音は停止した。一瞬で目を覚ました鬼一がその手で止めたからだ。
鬼一の眠りは常人よりも遥かに浅い。両親を亡くし、プロゲーマーとして戦うことを決めたその時から満足に眠れた日などほとんどない。どれだけ疲れていても、どれだけ眠くても1時間に1、2回は目を覚ます。
もぞもぞと身じろぎし、枕の下から頭を取り出す。毛布の下から右手を出して近くに置いた眼鏡をつまみ、普段の位置にかける。現在の時刻を確認した。時刻は朝の5時30分と表示されている。
「……っん」
ベッドの上で両手足を伸ばして固まっている身体をほぐす。ゆっくりとした動作で上半身を起こし、起こしたら何度か身体を曲げたり揉んでみたりする。疲れが残っていないか、痛みが残っていないか確認した。
セシリア戦と一夏戦による疲労もほとんど感じない。そのことに安堵する。
ベッドの上から降り、乱れたシーツと毛布の位置を整える。寝る前の状態に戻したことを確認したら、机の上に置いてあるミネラルウォーターを手に取り一気に飲み干す。
「ふぅ……」
緩慢な動作で仕切りになってるカーテンを開ける。その際、小さく声をかけることも忘れない。
「……たっちゃん先輩、入りますよ」
ここからの鬼一の行動は早かった。
鬼一のベッドの隣で眠っている楯無の姿を極力見ないように素早く通り過ぎる。鬼一にとって年の近い異性の眠っている姿は刺激が強すぎる。1度目を入れてしまって意識を失いかけるくらいには魅惑的だった。それからは鬼一自身は興味はあれども見ようとしない。鬼一から見たら楯無は美少女としか言い様がない。しかも自分に対して好意的に接してくれているのだから。鬼一は正直なところ自身の内の感情を持て余していた。胸の内に沸く感情がなんなのかが分からない。
そして鬼一は他人の寝顔を見るような無作法はしたくない。自分だって見られたくないものだからだ。
通り過ぎる際に冷蔵庫から冷えたスポーツドリンクを取り出すことを忘れない。
肩にかけたバッグの中から着替えを取り出しバスルームに入り、迅速に黒で統一されたジャージ姿に着替え終える。
そのまま部屋を出て行こうとするが、出入りする際は楯無の睡眠を阻害しないように慎重にドアを開けて閉めるときも慎重に閉める。
自室から出た鬼一は誰も居ない寮の廊下を歩いて外を目指す。
寮の外に出るとひんやりとした空気が肺に入り込み、その冷たさが全身に広がっていく。その冷たさが心地よい。何度か深呼吸を繰り返した鬼一はそ
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