五十六話:再会
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が先に砕けた。
「―――あ」
折れたアイゼンの柄を呆然とした表情で見つめながら落ちていくヴィータ。かつて一度たりとも折れたことのない誇りは完膚なきまでにへし折れた。もはやどうすることもできない。自分は役目を果たすことができず、守りたい物も守れなかった。薄れゆく意識の中で呟く。また、守れなかったと。
「そうでもないぞ、ヴィータ」
気づけば固い床に叩き付けられるはずだった体はガッチリとした腕に抱きかかえられていた。目を開けるとそこには見慣れた顔ぶれがいた。
「ザフィーラ…シャマル……」
「よく頑張ったわね、ヴィータちゃん。さ、今手当てをするからね」
「なんで……ここにいるんだよ?」
「主はやてからの指示だ。ここは我ら守護騎士に任せるとな」
ザフィーラの手からシャマルに移されながら疑問を投げかけるヴィータ。それに対してザフィーラが手短に説明を行う。はやてからの指示によりヴォルケンリッター達は全員がゆりかごの制圧に回っているのだ。
「そっか…はやてが……なら、ザフィーラ。あれを壊してくれよ、あたしには……無理だったからよ」
残った力を振り絞って駆動炉を指さす。だが、ザフィーラはそれをじっと見つめるだけで動こうとはしない。一体何を戸惑っているのかと彼女が思い始めたところで口を開く。
「……私にはあれを壊すのは無理だ。元より、お前に壊せないのであれば我らには壊せない」
「な…っ!? ふざけるなよ…!」
何故諦めるのかと食って掛かるヴィータ。だが、相も変わらずザフィーラの表情は変わらない。反対にシャマルの表情は嬉しそうに笑っている。一体どうなっているのかと黙り込むヴィータにザフィーラが言葉を続ける。
「何より、既に壊れている物はこれ以上壊せず―――鉄槌の騎士と黒金の伯爵に砕けぬ物はない」
何かが罅割れる音がヴィータの耳に届いてくる。目を向けてみるとどれだけ叩いても砕けなかった駆動炉が罅割れていた。まるで、最後の最後まで諦めることなく食いつく彼女の意思を体現したように突き刺さるドリルの先端から。
「へ…へへ。なんだよ、驚かせるなよ」
「すまないな。お前の手柄だと言いたかっただけだ」
笑顔を取り戻したヴィータの前で何千年もの歴史を持つロストロギアは強度の限界を超える。そして、胸の内に巣くっていた絶望と共に―――砕け散る。
駆動炉が止まったことでゆりかごが大きく揺れ動き始める。その様子は外からは微細な変化のために気づくことはできないが内部にいる人間にとっては大きなものであった。
「まさか駆動炉がやられるなんて……でも、陛下がいる限りはゆりかごは落ちない。防衛プログラムを新たに発動させて、後は念のためにディエチちゃんに陛下の援護
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