彼女達の結末
幕間 三
[6/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
れる。緑色の光、照らされる血は、溢れ出した液体は、肉は、色と色、混ざり、不可思議な色彩で宙に浮かんで。一瞬の悲鳴は、筋肉が千切れ、臓物が潰れ、骨が砕ける――無数の音、生き物が崩れる、壊れる音に呑まれて消えた。
「―――っ、クソッ……」
やはり。既に、内部に敵が。いや、違う。今の男の顔は知っていた。ならば、それが、意味するのは……
アリスの口から、一筋の血が流れ落ちる。唇を噛み、食い縛り。それでも尚、収まることなどありはせず。
裏切りか。それとも、元々敵の工作員だったのか。何であろうと、彼女に取っては何方であろうと同じこと。
味方の振りをし続けて。ずっと、彼女の大切なもの……それを壊さんと、計り続けていたのだから。
「……」
人の形を留めて居ない肉片を見遣る。反射的に殺してしまったのは失敗だったか。いや、どうせ口は割らなかっただろう。それに、敵のが目標とするものも、目星がついている。
夢に見た景色。この場所における死体操作技術の中核たる装置、ネクロマンサーの暴走。それは恐らく、彼等に寄って引き起こされた――引き起こされるそれなのだ。
車椅子を、自身の力で以って動かす。思うように動かない体が疎ましい。ESPで動かそうとすれば、加減が効かず壊れてしまう。あれだけの苦痛を味わえど、その力は万能と呼ぶには程遠く。不完全、不安定、何をするにも儘ならず、悔しさにまた、唇を噛む。そうしてポツポツと血を垂らしながらも、人気の無い廊下を越え、扉を潜り――最後。アンロックされたままの、最後の扉を。
扉を、開けて。
初め目に映ったのは、モニターの逆光に数名の研究員、職員。次いで見たのは、床に転がる白衣の数名。恐らくは死んだ、殺された。
「――何を、しているの」
声は、機械の動作音、淡々と騒々しく、そして静かな部屋に響いて。
影が、振り向く。アリスを視界に捉えた、その顔を。
やはり。アリスは、知っていて。
「アリスか。怖がらなくていい。もうじき終わる」
「……質問に、答えて」
体が震える。冷たい汗が首筋を撫ぜる。奪われていく体温と、直視し難い現実。何故、気付けなかったのか。後悔は余りに遅く。嘘、嘘、嘘であれと、願えど、祈れど。
「此方へ来ないかい、アリス。私たちは歓迎するよ。君を傷付けることなんて無い。この国が無くなったら、一緒に――」
現実は。確かな怒りに塗り潰されて。
「――なんで、そんなことが言えるの?」
「―」
「私が幼いから? 私が傷付いてるから? 一度殺そうとしておいて、それでも騙せると思ってる? 私が無理に実験を受けたと思ってるから? この街が嫌いだから? 私も嫌ってると思ってる? 私が」
大切に思う人が居る。大切にし
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ