彼女達の結末
幕間 三
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時が煌めいた。
沈黙の中で言葉を交わし。互い、互いに笑みを浮かべる。静寂の中で心を交わし、一人が、それを見守り続ける。そんな、時間が其処に有って。
アンデッドに関する研究は、人々が旧都に居た頃には既に行われていた。旧都の総合病院、素体が手に入りやすいその場所の地下で、秘密裏とは言え行われていたこと。新天地たる地下要塞では、その研究を引き継ぎながら大規模な生産工場、管理システムを設けただけ。砂の上の街を丸ごと捨て去り新都に入り、加わったのがESP――触れることなく物を壊す、超常の力、その研究で。
眉唾ものの絵空事。子供の空想、与太話。そんなものを大真面目に研究し、実験を繰り返し、繰り返して。そうして、半ば、偶然の産物。奇跡の成功体。出来上がったそれが、アリスだった。
「……また、この夢……」
与えられた個室、寝床で身を起こし。眉間に皺を寄せ、額に手をやり。アリスは呻く。
「虫と、アンデッドと、炎」
空を埋める無数の虫と、暴走するアンデッド、地下街を飲む炎の夢。大戦の最中の不安定な精神、それを思えば特段、不可解なものでもなく。けれど。
彼女は頭部に貼られた電極を外す。髪と髪、表皮に残ったペースト……電極を固定する為に塗られ、固まったそれが鬱陶しく。それでも彼女はそのまま、計測を行う研究員へと内線を使い連絡を取る。
「私の睡眠中に、何か観測はされている?」
『何か気になる事が?』
「夢を見るの。嫌な夢。何か観測されてない?」
受話器から漏れる音は無く。幾らかの沈黙を挟み、研究員は言葉を紡ぐ。
『微弱ながら、ESPの発動を検知しました。午前は夢の内容についての問診を挟みます』
「ん、分かった」
そう言って、受話器を置き。アリスは一つ、息を吐いて。
唯の悪夢であるなら良い。問題なのは、これがもし、ESPの齎すそれであった時。超常の力、人知を超えた力。それを以って、未来を垣間見たとでもいうのならば。それは、防ぐべきもので。
実験体とは言え、アリスは。自身の存在意義を理解していた。そして、それを是としていた。少女に対する人体実験、倫理に反するその行為が、街を守るために為された苦渋の決断であることを……半ば、狂気と錯乱に呑まれた末での決断であれど……彼女は理解し、受け入れていて。
それは、利害の一致。同一の志。彼女自身もまた。この街を、人々を。大切なものを守る為の、その、力を欲したが為。
「シャワー、浴びないと」
更衣室にへと足を運び、衣服を脱ぎ落とす。シャワールームの戸を開け、素足で床を踏む。
固まりきったペーストが気持ち悪い。胸の奥で騒めく何かが気持ち悪い。夢は夢で、現のそれではないのだと。未だ確定はしていないのだと。自身に言い聞かせても、アリスは
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