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しくないとかそう言いたいのか?」
「えぇ、まぁ…そうなります…」
「………」
その埋めようのない格差を自覚し黙りこくる……かと思われたが、エルザ姫はそんな事などお構いなしとばかりに言い放ってきた。
「―――そんなのどうでもいい事だろ、バッテン」
エルザ姫は大胆にもそう言った。
身分という意味では最上位にあるはずのエルザ姫が、あらゆる意味で格差の隔たりを切って捨てたのだ。
「相応しいとか相応しくないとか、そんなの重要じゃねえんだよ」
「へっ…い、いいんですか、そんな事言っちゃって…」
身分は…特権だ。
少なくとも雑兵も傭兵も正規兵も、それらを顎で使えるような力ある権威は特別なほどに重要なはずなのだ。
そうでなければ偉い人は偉い人でなくなってしまうからだ。
「いいんだよ」
エルザ姫は軽やかに机から降り立った。
初めて顔を合わせたあの時のように、スタスタと自分に歩み寄って来た。
「文句言わずに、俺様が盾になれと言ったんだから盾になれ。 それだけの話だ」
それとも…と呟いて、エルザ姫は続けた。
「あまりくだらない事考えるようなら……一発お見舞いして頭スッキリしてやろうか?」
姫様の手が指折り畳んで固めた拳へと変わり、それを突き出して来た。
ブンブン、と首を激しく横に振って遠慮する事にした。
逆らうのはまずい、エルザ姫の要望に応えないとあの攻城兵器のような拳が向けられている事に危機感を覚えた。
「なら決まりだな。 よしっ、俺様専用の盾が手に入ったぞ」
「おめでとうございます、姫様」
「―――、――」
脅し付きの要求が通った事にエルザ姫は嬉しそうに表情を変え、メイドさんがそれに同意する。
そして僕の後ろでパチパチ、と仮面の人が無言で拍手をしていた。
傭兵をクビにはならなかったみたいだけど…なんか、色々と納得いかないです……。
クビになりたいわけじゃないけど、僕自身の希望は傭兵である事であって、それ以外の何かになりたいわけじゃないのですが…。
「姫陛下が決めた事だ。 それを拒否する事が出来なかった以上、これは決定事項となる」
「は、はぁ……」
そんな僕のモヤモヤとした気持ちを察したのか、宰相さんが追い打ちをかけてきた。
クイッ、と押し上げるメガネの奥底には、いっそ諦めが付くような優しさが感じられる冷たさがあった。
宰相さん…素っ気ないけど、実はイイ人……?
「それじゃあ、バッテン」
「何度も言いますけど…僕は、レヴァンテン・マーチンです…」
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