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暴れん坊な姫様と傭兵(肉盾)
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したか。 ()が悪かったでしょうか?」
「んー、別に。 待ってる間に暇だったからな。 宰相(さいしょう)もいいタイミングだとばかりに書類を山ほど持ってきたし」

 エルザ姫がそう言うと、自分はその横にいる人の存在を今更気付いた。

「……」

 最初はエルザ姫の書類仕事を見て呆気(あっけ)に取られたが、彼女の横には(たたず)むようにその男は立っていた。

 気難しそうな面構(つらがま)えを顔に張り付かせ、メガネをかけた壮年(そうねん)の男性。
 書類の(たば)(かか)え、こちらに目を合わせずに物静かに(たたず)んでいた。

 エルザ姫という例外があったから忘れかけたけど、これがお偉いさんの態度と雰囲気なのだと思い出した。

「(若いなぁ〜…僕よりちょっと年上みたいだけど、あれで宰相(さいしょう)なんだぁ)」

 見た所自分と同年代くらいだけど、ああ見えて地位とか権力とかものすごく差があるのだろう。
 それに壁を感じるものの、果てしなく偉い人だと結構な年配な人ばかりだと思っていたから、僕は素直に感心する。

 しかしその顔にどことなく見覚えがあった。
 特定の誰かではなく、その昔よく見た特徴(とくちょう)の顔付き―――もしかして、僕と同じ同郷(エンリル)の人なのだろうか?



「さてっ」

 エルザ姫はバンッ、と書類の山に(てのひら)を叩き落とした。
 驚きな事に、本当にあの羊皮紙(ようひし)の数を片づけた事らしい。

「よいっしょ、と」

 ヒラリ、と書類の山を()けて、エルザ姫は机を飛び越えて来た。
 一瞬(あや)うく(たけ)の短いスカートの中が見えそうなその動きから机に腰掛(こしか)け、これ見よがしに足を組んだ。

「姫様、はしたないですよ」

 そんな行動に出たエルザ姫を見かねて、メイドさんが(いさ)めた。

「別にいいだろ。 こうやって足を組んでる方がキマってるし、高い所から見下ろすのは当たり前の事だろ、何せ俺は偉いからな」
「(そりゃ…姫陛下だし、文句なしに一番偉いよね)」

 “陛下”という呼び方は国王に対する呼び方。
 信じがたい事にこの少女がこの国で一番偉いであるのは事実らしい。
 貴族とかは庶民を見下(みくだ)すものであるのはわかるけど、エルザ姫の包み隠さないハッキリとした物言いはむしろ清々(すがすが)しいものだ。

「それにここの椅子(いす)だと、段差がないから高さが物足りないんだよ」

 机に座った事で椅子(いす)に座っていた時よりも視線が高くなって、わずかながら自分を見下(みお)ろす形となっている。
 立っている自分よりもちょっと高い位置から向けられる視線は、どこか
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