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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九話 シャンタウ星域の会戦 (その1)
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見ている。そして非常に柔軟だ。この男たちを打ち破るのは簡単なことではない。敵も理解しただろう。
敵の残存部隊が攻勢をかけてこないのが不思議だった。中央と左翼が攻勢をかけてくればもう少しこちらを押し込めただろう。その中で勝機も見えることが有ったかもしれない。
だが現実には攻勢をかけてこないだけでなく、どちらかと言えば戦意が無い様に見える。何を考えているのか? どうも敵の動きがちぐはぐな感じがする。
それにしても厄介なのは第十三艦隊、ヤン・ウェンリーか。ロイエンタール、ミッターマイヤーを相手にしながら一歩も退かずに戦っている。
さすがに二人を振り切る事は出来ずに居るが、こちらが勝とうとすれば何処かで裏をかかれそうな怖さがある。
日付が変わった。別働隊が戦場に到着するのも間も無くだろう。これからが勝負だ。
帝国暦 487年8月19日 0:00 帝国軍総旗艦ロキ レオポルド・シューマッハ
「閣下、戦場まであと二時間で着きます」
「そうですか」
ワルトハイム参謀長の声に司令長官は穏やかに答えた。
艦隊はカストロプ鎮圧に行くと見せかけてリヒテンラーデに赴き待機した。艦隊がリヒテンラーデを発ったのはローエングラム伯がオーディンを発った日、八月四日だ。
総旗艦ロキの艦橋内の人間たちは、これから赴く戦場の事を考え軽い興奮状態にある。帝国軍だけで二十万隻近い艦隊が集結するのだ。
反乱軍も入れれば三十万隻を越える。興奮するのも無理は無い。そんな中で司令長官だけが何時もと変わらぬ落ち着きを保っている。
総旗艦ロキの艦橋は他の戦艦とは少し違う。普通提督席の傍には会議用の机や椅子はない。参謀たちは提督の傍で立っている。
しかしこの艦は違う。提督席の傍に会議卓と椅子を置き、我々参謀たちが座っている。司令長官の言によれば、傍で立たれているのは落ち着かないらしい。
なかなか座ろうとしないフィッツシモンズ少佐には“足がむくむから座るように”と言い、きつい眼で睨まれていたが、平然としていた。
「閣下、戦場はどうなっているでしょう。味方は優勢に進めているでしょうか?」
「まあ不利ではないと思いますよ、参謀長。それに現時点で勝っている必要は有りませんから無理はしていないでしょう」
司令長官の言葉に皆が頷く。そう、現時点で帝国軍が勝っている必要は無い。大事なのは我々が戦場に着くまで敵を逃がさない事だ。もう直ぐダゴン星域の会戦を超える戦いが始まるだろう。
ダゴンでは帝国が敗れ、反乱軍は勢力を拡大した。今度勝つのは帝国だ。そして反乱軍の勢力は著しく弱まるに違いない。
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