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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九話 シャンタウ星域の会戦 (その1)
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もっとも皆自分の陣を何処に置くかで頭が一杯だったのかもしれない。総司令部は遠方に有りながら遠征軍を指揮しようとしている。アムリッツア、ボーデン、ヴィーレンシュタインに通信を中継する艦を置き指揮するようだ。
「敵軍、イエロー・ゾーンを突破しつつあり……」
オペレータの囁くような声に軽く右手を上げる。もう少しだ……。
おかげで私達の傍には誰も寄り付きたがらない。総司令部が私達に無茶な命令を出すのは分かっている。巻き添えを食いたくない、そう言うことだ。自然、布陣は右翼から第十三、第十、第五、第十二、第四、第一、第七、第八、第二の布陣と成った。
ボロディン提督の左隣はモートン中将になる。士官学校卒業ではないため割を食ったらしい。後の世の歴史家たちがこの会戦をどう評価するのか、是非生き残って知りたいものだ。歴史上もっとも無責任に行なわれた遠征と評されるだろう。
「敵、完全に射程距離に入りました!」
悲鳴のようなオペレータの声に右手を振り下ろした。
「撃て!」
光の束が暗黒の宇宙を切り裂き、帝国軍へ襲い掛かる。帝国軍からも同じように光の束がこちらへ向かってくる。両軍で光球が炸裂し、眩しいほどの光がスクリーンを支配する。シャンタウ星域の会戦、そう呼ばれるであろう戦いが始まった。
帝国暦 487年8月18日 18:00 帝国軍 ローエングラム艦隊旗艦ブリュンヒルト ラインハルト・フォン・ローエングラム
帝国軍、反乱軍、両軍合わせて二十万隻以上の艦船が勝利を得るために戦い始めた。帝国軍の基本方針は決まっている。敵を打ち破るのではなく受身で敵を引き付ける。
いずれヴァレンシュタイン司令長官率いる別働隊が来る。全面攻勢に出るのはそれからだ。それまでは敵をこの場に引き留めなければならない。敵の集結を許したのもその所為だ。一撃で敵を殲滅する。受身の戦いは得意ではないが、勝つためには我慢だ。
「敵ミサイル、接近!」
「囮ミサイル、射出せよ」
「主砲斉射!」
艦内を命令と報告が慌ただしく交錯する。スクリーンの入光量を調整していなければ光球の眩しさで目を開けていられないだろう。ここにいる二十万隻の艦全てで同じような状況が発生しているはずだ。
帝国軍は左からロイエンタール、ミッターマイヤー、メルカッツ、クレメンツ、ミュラー、俺、ワーレン、メックリンガー、アイゼナッハ、ケスラー、ルッツの順で陣を敷いている。
敵は第十三、第十、第五、第十二が右翼を占めている。反乱軍の精鋭部隊と言っていい。特に第十三艦隊はヴァレンシュタイン司令長官が最も危険視した男だ。ロイエンタール、ミッターマイヤーの二人掛りで対応させる。あの二人なら何とかするだろう。
シュタインメッツ、キルヒアイス、オーベ
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