第四話 新王の即位その十二
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質素な食事だ、しかし滋養にいいものは揃えられている。特に王のそれには様々な霊薬各地から取り寄せたそれが入っている。
そういったものを口にしてもだ、マリー達に青い顔で言うのだった。
「どうもです」
「お身体が、ですか」
「優れないと」
「今日はまだいいですが」
しかしというのだ。
「よくありません」
「王よ、そう言われてはです」
セーラが王を気遣い言う。
「お心からです」
「悪くなっていくと」
「病は気からといいます」
それでというのだ。
「ですから」
「ここはですね」
「はい、お心を明るくされるべきです」
「それがいいですね」
「葡萄酒でも飲まれて」
酒を進めるのだった。
「東方の言葉で酒は百薬の長といいますから」
「だからですか」
「飲まれて下さい」
葡萄酒、王の杯の中を満たす紅の酒をというのだ。
「この場は」
「この酒を」
「はい、そうすればです」
「心が晴れるというのですね」
「左様です」
「王よ、セーラの言う通りです」
マリアも王に言う。
「まずはお心をです」
「明るく持つことですね」
「そうです、ですから」
「わかりました、それでは」
「葡萄酒を飲まれお食事も摂られ剣と馬術を楽しめば」
マリーはさらに言った。
「違います」
「身体を動かしてもですね」
「違いますので」
「では」
「はい、そうして活発に過ごされて下さい」
「許す限りですね」
「そうです、そうされて下さい」
是非にとだ、王に言うのだった。
「ここは」
「それでは」
王は三人の言葉に頷いた、こうしてだった。
葡萄酒を飲み食事も摂り身体も動かした、それで幾分かは晴れやかな気持ちになった。だがそれでもまだ王の気持ちは晴れず憂いは尽きなかった。その身体の弱さ故に。
第四話 完
2016・4・5
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