第短編話 三
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眺めて。
「そりゃまあ……ゲームじゃない?」
金属の棒で炉の中のインゴットをかき混ぜながら、リズはキリトの趣味、と問われて思ったことを答えた。ただしそれは、背後の彼が望んでいた答えではなかったらしく、苦笑する気配が伝わってきた。あいにくとこのALO以外には、彼はVRゲームは持っていなかったようだから。
「……クラインとか、エギルとか」
「……ゲーム?」
「レコン……いや、いいか」
「うん、ゲームよね……って、ヤバっ」
参考にならない。どちらもそんなことを思っている空気を漂わせていると、リズの目の前の炉に入っている、インゴットがどうやら溶けだしてきたようで。すぐさまヤットコで取り出すと、前に用意しておいた、水がなみなみと注がれた瓶に入れた。ジュゥゥゥ――という金属素材が冷却される音と、とてつもない量の水蒸気が瓶の中から溢れ出した。
「ひゃっ!?」
「うおっ!?」
さしもの彼もハンマーを叩く仕事を中断し、突如として店中を覆った白い煙に巻かれていく。どちらからともなく、すぐさま工房の窓という窓を開けていき――現実と違い身体に悪影響はないだろうが、仕事にならないことは確かだ――外に向かって煙を吐き出していく。
「……リズ」
「ご、ごめんごめん! ほら、あたし叩くの変わるからさ!」
窓の外の空気を吸う彼に代わって、自分専用のハンマーを用意すると、水蒸気の元となった金属素材を金床に置く。どうやら先程まで彼が叩いていた金属素材は、武器となって完成していたらしく。金床の横には抜き身のカタナが二つ、そのままの形で置いてあった。
「あ、鞘の見繕いよろしく!」
「……了解」
まだ口元を手で被ってせき込みながら、彼は金床の側から抜き身のカタナを二本持っていくと、近くの机に座ってストレージを操作していく。鞘は鍛冶屋だけで作れなくもないが、装飾にこだわるプレイヤーにしてはそうではない。お馴染みの細工師の店から、まとめて仕入れた芸術品としての鞘が必要になり、それらは全てストレージの中にあった。
「…………」
カタナのことなら彼に任せて大丈夫だろう。黙々と似合う鞘を探している様子が分かる、そんな真面目さを感じさせる背中に微笑みながら、あたしは金床に乗せたインゴットに向き直った。未だに水蒸気を小さく発生させているソレに、とある鍛冶スキルを乗せたハンマーを叩きつける。手間取らせた分、値段は絶対高くつけてやる――なんて、不純な思いを抱きながら。
「……あれ、さっきまで何の話してたか」
「えっと、アレよほら、趣味のこと」
色々なことがあって、先程まで何の話をしていたか、忘れてしまっていたけれど。そういえば、あたしから彼に、趣味のことを聞いたのだった。彼の背中
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