第短編話 三
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『ヒロインから見た主人公』
「そういえば……ショウキってさ、趣味とかってあるの?」
「え?」
注文された品を予算と性能の折り合いがつくように、素材を炉に放り投げながら。あたしはふと気になったことを、背後でハンマーを金属に振り下ろしていた彼に聞いた。もちろん突然聞いたからか、彼の口からは妙なトーンの返答が聞こえてきたが。
「だから、趣味よ趣味。このALOとか、剣道で身体鍛えるとか、それ以外の息抜きの趣味」
「……何だ突然」
仕事中だからか、彼はこちらを見ることはない。それは炉を見ているあたしも同様で、金属素材を叩く音が定期的に響き渡る中、背中合わせであたしたちは話しだした。
「突然気になったのよ。で、あるの?」
「ったく。でも言われてみると…………ないな」
あたしの強引な口振りに嘆息しながらも、彼はゆっくりと考えていたようで。しかして、そのゆっくりとした考察の時間がもたらした物は、特に何もないということだったらしい。そんなことだろうと思った――と、今度はあたしが嘆息する番だった。
「暇にならない? それ」
「いや……暇になった時はゆっくり出来るだろ?」
そんな話をしている間にも、炉の中の金属は暖まり終わったようだ。幅の広いスコップのような器具――ヤットコを手袋越しに持つと、炉の中に放り込んでいた金属素材を回収し、叩く仕事をしている彼の方に渡していく。
「はい、よろしく」
「はいよ。置いといて」
そんな会話を軽く繰り返すと。あたしは目の前で燃え上がる炉の温度を、次の金属素材に合う温度にしながら、次はどんな武器のオーダーだったか確認する。妙に手の込んだ依頼だったことに顔をしかめながら、注意して炉に放り込んでいく。
「キリトとかはどうなんだろうな、趣味」
「キリトぉ?」
あたしの背後から鳴っていた、定期的な金属音が鳴り止んだ。どうやら彼の制作する武器が完成したようだったが、どうも悲しい感情が彼の背中から伝わってきた。どうせ、せっかく作った武器が売り物になって自分の手を離れてしまう、というのが悲しいのだろう。
「はいはい、感傷に浸ってないで次に行くー」
「あ、ああ……」
まったく、変なところで繊細なんだから――と、聞こえないように呟きながら。……とはいえ、彼には背中で伝わっているだろうけど。あたしは更なるインゴットを追加で炉に、彼は更なる金属素材を机の上に。それぞれ手に取っていく。
「……で、何だっけ? キリトの趣味?」
「ああ。一応同年代的にな」
正確には一歳下だが、という注釈を最後に、またもやハンマーで金属素材を叩く音が聞こえてきた。定期的に聞こえてくる、心地よいハンマーの音に耳を任せつつ、扱いにくい炉を
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