第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
最後の物語:不可視の変調
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思わず額を手で覆うピニオラだが、なるほどと納得させられる。
この外見年齢に相応な年齢であれば、まだローマ字表記を習うには幼過ぎることだろう。自宅にPCが設けられていれば自ずと学ぶ機会もあるだろうが、ネット社会にこの年代の子供を晒すことを善しとしない親だっているだろう。そういった意味では、始めて触れたウェブサービスがこんなデスゲームであったとは、恐らく細心の注意を払っていたであろう両親にしては皮肉以外の何物でもないのだろうが、貌も名前も知らない相手を同情する気概は生憎とピニオラは持ち合わせてはいなかった。
目を向けるべきは、あくまでも自らの興味その一点にのみ。それ以外は些事にさえなりはしない。
「えっとぉ、なんて言えばいいんでしょうかぁ………………まあ、どうにかなりますかねぇ………」
ネットリテラシーに対する危機感は幼子に求めても埒が明かないと自己完結させると、ピニオラは立ち上がるや《みこと》の小さな手を握った。
どうせ傍に居るのだ。無為に脅威を模索しているよりは、その時に自らが対処するのが効率的と判断した故の諦念であったが。もしくは、思考を単純化したというべきか。手放さないようにするために、自分がみことを守れば良い。観察対象としてこれほど好奇心をくすぐられるものは滅多に出会えないだろう。あの少年のこともある。このところは楽しみが尽きなさそうだと胸を膨らませつつ、ピニオラの横顔を見上げたままの少女に、ピニオラも視線を落として向き直った。
「じゃあ、先ずはお洋服ですかねぇ。女の子であるならば、身だしなみは最優先事項ですからね〜」
黒鉄宮を背に、黒鉄宮へ流れる雑踏に逆らい、
《二人》になった彼女達はゆっくりと歩み出した。
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