第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
最後の物語:不可視の変調
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うなっていましたかねぇ〜?」
「街中でコソコソ隠れてるような奴が………調子に乗りやがって!?」
とはいえ、未だ心が折れないのは彼等の矜持か、それとも恐怖を知らないだけか。
その初々しさがピニオラの琴線に僅かに触れるものの、興味を抱くには程遠い。どうにも中途半端な相手では不完全燃焼で終わってしまうことだろう。やむなく、ピニオラはメニューウインドウを開き、手早く操作して新たなウインドウを腕の中に居る彼の目の前に展開する。
「じゃあ、いっそのことこのまま二人で楽しんじゃいましょうかぁ?」
展開したウインドウはデュエル申請。
彼等のような力を振りかざす者にとって、この上ない示威行為となるであろうピニオラの挑戦状。
しかし、今もなお背後から腕に包まれる格好のフルプレートは持ち主の震えでカタカタと小刻みな音を鳴らした。
それもその筈。イエスかノーしか選択できないウインドウには、そのデュエルのモードが既に選択されて表示されていたのだから。
――――《全損決着モード》という、この世界では禁忌とされる形式が、ウインドウに克明に記されていたのだから。
「………う、ぁ………あ………!?」
密着したアバターから滲み出す殺意は粘度を以てフルプレートの中に滴るようで、まるで身を固めた堅固な鎧さえ意に介さず、自分の命など容易く刈り取られてしまうのではないかとさえ思えるほどに、根源的な恐怖はその精神までも蹂躙して、彼の心を萎縮させた。
間もなく硬直した喉から声が絞り出され、少女を取り囲んでいた《軍》はピニオラを振り払うや否や、一目散に走り去ってしまった。絶叫は曲がり角を過ぎて遠ざかっていく。女を相手に背を向ける男はやはり趣味ではないと見限っては溜息をつく。少しは気骨を見せるかと思って期待したものの、やはり弱者をいたぶる小物ではこのくらいの茶番劇が関の山だったらしい。
取り残されたピニオラは少女と僅かに目が合うものの、彼女に然したる目的はない。
ただ、少し自信過剰になった身の程知らず目を覚まさせただけ。それ以上の意味はある筈もないのだから。
「さてとぉ………、お邪魔しましたぁ」
最後に、尻餅をついたままの少女に一礼し、その場を後にする。
やや時間を無駄にしたように思えるが、鬱屈とした感情は幾らか晴れたのは確かだ。気分転換と思えば無駄な行為ではなかったと自らに言い聞かせつつ、踵を返して黒鉄宮を目指す。しかし、道中も半ばに再びピニオラは歩みを止める。
黒鉄宮へと足を運ぶ興が殺がれたというわけではない。ただ、少しだけ装備重量が増して動きが鈍ったと言うべきか。
………ローブ越しから腰に、さっきまで軍に恫喝されていた少女が抱き付くようにしがみついていたのだ。
「
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