第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
最後の物語:不可視の変調
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けられない。それはつまり、ここには《頼れる誰か》がいないことを理解しているという証左になるだろう。
………デスゲームでの《死別》か、単身ログインしての《離別》か。どのみち少女には頼れる相手がいないのだろうと推測する。しかし、離れた位置に立っていたモスグリーンの胴衣にフルプレート装備――――《軍》のプレイヤーが少女に視線を向けていたのを察知する。
「なんだ、またあのガキ………?」
「ここ三日くらいずっとこんな調子だぜ………ったく、いい加減うるせえよな」
しかし、軍が少女に対して視線と同時に向けられていたのは、憐憫の情とは対極にあるもの。
突如として詰め寄られ、それまでとは異なる恐怖で声が窄まってしまったようだ。明らかに非戦闘型の、それもまだ幼い少女を相手にフルプレートの一団が寄って集って怒鳴り声を浴びせる光景は、ある意味で哀れみと乾いた笑いを零させるものがあるのだが、しかしてそれは、同時にピニオラの中では最も気に入らない部類に入るものでもあった。
一方的な複数人の怒声と、怯えた少女の細い声が幾度か交錯した後、《軍》のプレイヤーのうちの一人が少女を突き飛ばして転ばせる。
静観か無視を決め込もうとしたピニオラは、構わず足を進めた。
《隠蔽》スキルのModを発動し、姿と音を他者の認識から消去する。
少女を取り囲む《軍》の一人、その小さな身体を突き飛ばした男の背に身体を預けるように首筋に腕を絡ませ――――その手に自らの得物である鉤爪型の刃、片手用武器《カランビット》を握り、男の喉元に鋒をあてがった。
「な、なんだ!?」
ピニオラは瞠目する彼等の反応に笑みを零しつつ、男の耳元で囁くように、されど周囲にも聞こえるように声を出す。
「こんなに小さな女の子相手に《軍》の皆さんが寄って集ってだなんてぇ、この娘がそんなに強かったですかぁ?」
「………騒いでうるさかったから、躾をしてやろうって思っただけだ。文句でもあるのか!?」
「ふむふむ、そーですかぁ、躾ですか〜………でもこれってぇ、弱い者いじめに見えちゃいませんかぁ? いい年した大人の皆さんで囲い込んだら可哀想じゃありません?」
「貴様、俺達に楯突くってのか?」
「くふふ………ほーんとぉ、お口だけは一人前なんですからぁ」
応酬の末にピニオラは小さく笑うと、カランビットの鋒を喉から離して、代わりにゆっくりと喉に人差し指を這わせながら続けた。同時に、嗜虐的な感情が口角を吊り上げる。
「仮に圏外だったとしたらぁ、わたしの隠蔽スキルを看破出来ない時点で貴方はもう死んでるんですよぉ? こうやってぇ、スゥーって喉を裂いておしまいですぅ………これだけ実力差のある相手が楯突いてきたらぁ、貴方たち今頃ど
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