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忘れ形見の孫娘たち
8.鈴谷は仲間はずれ
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ばれた関係というものはない。でも仲間たちと爺様との固い絆に触れた鈴谷の中で、彼女なりの爺様像というものが構築されていったみたいだ。恐らくは疎外感が払拭される程度には。みんなの悲しみがある程度理解でき、悲しみを共有することが出来る程度には。

「それになにより、あなたとの出会いが大きかったと思います」

 妙高さんが、本当に優しい笑顔で僕にこう言った。那智さんとはまた違ったタイプの、やわらかくしなやかな大人の女性の雰囲気を持つ妙高さん。こんな人に優しい笑顔を向けられると、年上好きの男の人の気持ちもよく分かる。

「僕がですか?」
「ええ。大淀がこちらにおじゃました日の夜でしょうか。鈴谷が楽しそうにぷんすか怒ってたんで、理由を聞いてみたんです。そしたら……」

――なんか今ムカってした! きっとかずゆきが鈴谷の悪口言ってるんだ!!

「て言ってたんです」

 あー……あの、涼風が僕に敵意むき出しでガルガル言ってた原因の……

「でもそれがどうかしました? ……つーか楽しそう?」
「ええ。本当に楽しそうに言ってましたよ」
「なんで楽しそうなんだあのアホは……」
「きっとね。そんな風に軽口を言える友達が出来たことが嬉しかったんですよ」

 あーなるほど。疎外感を感じていた鈴谷には、そんな風に軽口を叩き合える相手が出来なかったってことか……本質は僕の家に来ていたあのザ・女子高生な鈴谷で間違いないと思うけど、仲間の前ではあんな風に気楽に過ごしてなかったのかもしれないな……。

「もちろん私たちも鈴谷とは仲良くやってはいた。でも、ここに通うようになってからの鈴谷は本当に明るくなったよ。貴様のこともとても楽しそうに語っていた」

――ぶふぅ……頭からそうめんをかぶったかずゆき……
  今思い出してもマジウケる……ブフォッ

――かずゆきはさー。鈴谷がオールナイト誘ってもノッてくれないんだよー。
  ……ひょっとして不感症? ……いやひょっとして……まさかかずゆきは……?!

「そんな彼女を見ていて、合流した次の日に提督を失った鈴谷への配慮が……私達にはできてなかったんだと実感しました。……そして和之さん、あなたは鈴谷にとっての提督になってくれ、私たちが出来なかった鈴谷のケアをしてくれました」
「……いや、提督なんてのが何なのかは僕にはさっぱり分かりませんけど……でも、僕はそんなつもりはなかったですよ? ただ、鈴谷と仲良くやっていただけです」
「それが鈴谷には必要だったんです。和之さん、本当にありがとう。あなたのおかげで、鈴谷は救われました」
「私からも礼を言う。我が鎮守府の重巡洋艦、鈴谷を元の明るい元気な子に戻してくれてありがとう」

 妙高さんと那智さんは、僕に向かってそう言って頭を下げていた。


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