第20話『吹き渡る風』
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「見せてやるよ、このデカブツが! これが俺の魔術だ!!!」
ドゴ!
俺の拳は熊の大きな腹を捉えた。
しかしそれを受けた大熊は微動だにしなかった。
無論、当たった瞬間だけだが・・・。
ビュオオォォォォ!!!
天気が一変、台風の様な強風が吹き荒れた。
その風は主に俺の拳へ集中し、そしてその風圧は薙ぎ払うように大熊を吹っ飛ばした。
ドッシャアァァ!
軽い物の様に宙をクルクルと舞い、放物線を描いて熊が吹っ飛ぶ。
そして川原に叩き落とされ、小石が散らばる音が響いた。
そこに横たわった獣は死んだのか気絶したのか、動き出すことはなかった。
「・・・倒した、のか?」
一瞬の出来事であったため、俺はまたしても実感が湧かなかった。
だが唖然としてボーッとしている俺を、とある声が目覚めさせた。
「三浦君、大丈夫!?」
心配そうな顔でこちらに駆け寄って来る戸部さん。
そこで、俺は彼女が心配している事に気づいた。
「あ…」
傷を負った左肩を見てみる。
すると傷口から今も鮮血が溢れ出ていた。あぁ、さっきまで痛みを感じてなかったのに、痛くなってきた…!
てか、出血多量でどうにかなったりしないよな?
いやそれよりも、痺れる様な何とも言い難い痛みに襲われて、凄く痛い。とりあえず痛い。
「早く治療しないと!」
戸部さんがそう言い準備に取りかかろうとするも、道具は一切ないため戸惑っていた。
第一、この怪我は救急箱程度じゃダメだと思う…。
あ、やべ、何か意識が朦朧としだした。
し…視界が、揺れる…。
俺は疲労と負傷のためか、静かに気を失った。
*
「……い」
何だ? 何かが聞こえた気が…?
「…おーい」
俺を…呼んでるのか? 一体誰が?
「ちっ面倒くせっ。ちょっとビリってやっていいよな? 心臓マッサージ的な」
「いやいや。コイツ怪我人だから、アンタみたいに加減ができない奴はそういうのしなくていいって」
今度はハッキリと聞こえた。
てか、この言い合いの雰囲気、どこかで聞いた事あるぞ!?
「部長…!?」
俺はバッと起き上がりながら叫んだ。
すると、その人は気づいたのか、こちらに向かって声を発した。
「お、三浦起きたのか。調子はどうだ?」
そう訊かれても、答えるより前に周りが気になってしまう。
ここは、宿の俺たちの部屋。そして俺は布団に寝かされていた。俺の周囲には魔術部の部員が全員揃っている。
窓の外には夕焼けが輝いており、それは「もうこんなに時間が過ぎた」の
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