第20話『吹き渡る風』
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、こんな大きな獣を前にして、自分より前に立ってくれるなんて普通は有り得ない。
だって俺の脚なんか、勝手にガクガク震えてるもん。
でも、今の俺は“普通”じゃないんだ。
「戸部さん、さっき言ったよね、俺を誘った理由。どうやらホントにそうなってしまいそうだよ」
「え…?」
「俺が、君を守ります」
…自分でも恥ずかしくなってくる台詞だ。
だがきっとこの言葉は、俺にも戸部さんにも勇気を与えたはずだ。
できるかできないか。そんなもの関係ない。『やるしかない』んだよ。
絶対に、魔術を使わなきゃならない。
「かかってきやがれ!」
俺は必死の思いで叫んだ。
獣は大声に対して敏感? そんなの知らん。
俺は無我夢中で熊に立ち向かう。
「三浦君!」
後ろから戸部さんの声が聞こえてくる。
だが俺には、戦闘態勢に入った大熊の攻撃を見切ることしか考えてなかった。
「グアァァァ!!!」
大熊の雄叫びが森中に響き渡る。と同時に、右腕を俺に向かって振り下ろしてきた。
「ふっ!」
だが俺はそれを見切り、体を捻らせ横に回避した。たぶん今ので一日分の体力と精神力を使った気がする。
だがこれで、奴の標的は俺になったはずだ。
「戸部さん、今の内に逃げて!!」
俺は戸部さんに叫んだ。
戸部さんは急展開に混乱していたようだが、賢い頭脳である答えを導き出したようだった。それは・・・
「何か秘策があるんですよね? 私が囮をやって時間を稼ぎますから、その準備を!」
彼女の目からは本気の意思が読み取れた。
『覚悟はできている』
彼女はそう言ってるように見えた。
だが易々とそれをやらせるほど、俺は甘くはなれない。
「ダメだ、俺が引きつけている間に早く!」
「嫌です! 三浦君を一人危険な目には遭わせられません!」
俺は納得した。
彼女は正義感が強いのだ。だから身を挺してでも人を守ろうと・・・。
でも、彼女と俺では決定的違いがある。彼女にコイツを倒す術はないのだから。
「グルルル…」
大熊が俺ら二人を見渡し、どちらを狙うかを迷っているようだった。
ここで戸部さんの方へは絶対に行かせられない。
こうなったら一か八か!
「集中…」
俺は精神を統一し始める。
俺は魔術を使える。俺は魔術を使える。俺は魔術を使える。
そう暗示を掛けた俺は、一気に熊へと飛び出した。
「喰らえ!!」
俺はあの時のように右手を伸ばした。
できるだけあの状況に近づけて・・・
力を…込める!!!
「ハァ!
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