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魔王に直々に滅ぼされた彼女はゾンビ化して世界を救うそうです
第5話『魔の思惑』
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W−−真っ赤な彼は独りだった だから誰かを愛したかった−−W
◇ ◆ ◇
「よっ、スィーラ」
「……ぃ、……ぅ!」
ジークが軽く手を振って挨拶すると、深緑のドレスを纏った少女が満面の笑みを浮かべて答える。彼に貰った自分の名前を噛み締める様に胸の前で手を握りこみ、自分を孤独から救ってくれた−−少なくともスィーラがそう認識する恩人の前に駆け寄っていく。
今日は、メイリアは来ていない様だった。不思議に思ってチラチラとジークの後ろに目をやっているのを察したのか、ジークが親指で軽く後ろを指しつつ口を開く。
「……あぁ、メイリー?最近よくここに来てたろ?それで親御さんから『年頃の娘が男と二人で森深くまで行くとは何事かっ!』とかでどやされたらしくてさ。今日は大人しく街で魔法の練習してるってさ。……まぁ、魔法の練習っていうか、魔力の制御が主なんだが」
微妙に声のトーンを低くして苦笑したジークに、少女は戸惑った様に首を傾げる。「なんでもない」と笑った少年が流し、スィーラの隣に並んで歩み始める。
−−話は変わるが、ジークがスィーラとする事と言ったら基本的に限られている。
既にスィーラが名を貰ってから三日ほど経っているが、これまで毎日欠かさずジーク達はこの場を訪れていた。そしてした事といえば、簡単に何のひねりもなく事実だけを述べるならば、散歩だ。森の中に何か娯楽施設がある訳でもなし、森の自然を見て回る。ジークはあまりそういう事をしなかったので退屈ではなかったし、スィーラの方は『誰かと一緒に居られる』という事実のみで十分に楽しめるらしい。それも、たくさんのものをくれた彼──ジークであるなら、その名も知らない感情は満たされていく。心がぽかぽかと暖かくなり、幸せな気持ちに浸れる。
それは、今日も変わらない。
「行き先はどうする?川は毎回行ってるしなぁ……山にでも行くか?」
ジークが提案すると、スィーラは笑みを浮かべてこくりと頷く。その返答に少年は「よし」と伸びをしつつ言葉を返す。背に背負う剣を確認した後スィーラを促し、川の上流にある山へと向かう。山と言ってもそう標高がある訳でもなく、数時間掛ければ登れる程度の山だ。少しばかり常人とは離れた身体構造のジークと、魔族であるスィーラには丁度いい。
「あー……やっぱこの辺りは乾いてないか。まあいいや」
ジークが水溜りの蔓延る山道を見てボヤく。ジークがスィーラと出会う前日の事ではあったが、この辺りでは珍しく記録的な大雨が降った。大体の場所は土が全て吸ってしまって乾いているが、どうにもこの辺りは昔から水はけが悪く、乾きにくいらしい。
ぬかるむ地面を越えてしばらく歩き、緩やかな斜面を登っていく。土壌が不恰好とはいえやはり
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