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魔王に直々に滅ぼされた彼女はゾンビ化して世界を救うそうです
第5話『魔の思惑』
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杖の先に集まる炎が形を成し、不自然な増幅を受けて天に放たれる。
 直径30mはあるかと思える程の熱線は上空に登り、存分にその熱気を撒き散らす。根元の部分で周囲の建造物が焦げてしまったり壊れたりしたが、今はそんな事に構っていられるほど悠長な事態では無い。
 全方位からの、魔族の襲撃。逃げ場は無く、騎士団がなんとか陣形を組んで抑えようとしているが、それももうじき崩壊するだろう。

 それは確かに騎士団も魔族に対抗する術は持っている。対魔傭兵(リ・メイカー)程ではないが、それくらい出来なければ街の守護者などやっていられないからだ。が、いくらなんでも今回は分が悪い。
 なにせ、街の南端に居たメイリアが目視しただけで数百は居たのだ。それが街を囲っているとなると、その数は確実に千は居る。騎士団の人数は勝ってこそいるものの、一人一人の力量が違い過ぎるのだ。

 街の中央からでもメイリアの魔法は届くだろうが、しかしメイリアの魔法は彼女の『体質』のせいで制御が出来ない。確実に殲滅する自信はあるが、騎士団すら巻き込んでしまう。かといって撤退をさせようものなら魔族達はすぐに流れ込み、魔法での殲滅も追い付かずに魔族達は中心部に流れ込んでくるだろう。

 逃げ場はない。
 逆転策もない。

 残る可能性は、それこそ『ジーク(専門家)』ぐらいのものだ。

 街は燃えている。魔族達の火矢と魔法によって半ば崩壊した。街の人々は絶望しきっている。

 ──せめて一人だけでも、希望を持たなければならない。

 母も父も、顔を暗くして今にも泣きそうだ。

 ──知った事か。ならば自分が前を向け。みんなの希望を繋げ。

 もう死は目前。この場の人々は皆死刑囚。抗う術は無く、未来に待つのは終わりのみ。

 ──それでも、諦めない。何に縋っても、幸運に全てを任せようとも、敵を前にしている間くらいは決して闘志を揺らがせない。

 それが、このメイリア・スーという少女が密かに憧れた人々。


 その背は広かった。
 その手は大きかった。
 その心は深かった。
 その勇気は硬かった。

 いつかその輝かしい栄光に追いつきたくて、黄金の少女は魔導の道に進んだ。

 その生き様に心底心を奪われたから。

 その生き様に強く胸を打たれたから。

 その生き様に一目惚れしたのだから。

 かつて父が読み聞かせた昔話の一幕に過ぎない。子供向けに脚色が加えられたものだったかもしれない。

 −−けれども間違いなく、それこそが『対魔傭兵(リ・メイカー)』−−かつて一度人類を救った、神話の英雄達の生き様だったから──!






 −−白銀の少女が遥か上空からその姿を霞ませて現れたのは、そうして杖を構えたのと同刻だ
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