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魔王に直々に滅ぼされた彼女はゾンビ化して世界を救うそうです
第5話『魔の思惑』
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ある、『魔界(あちら)』と『人間界(こちら)』を繋ぐ道。
 かつて捕縛された魔族によると『パラダイス・ポータル』という名らしいその転移座標記録術式。こちら側からでしか術式を発動できない代わりに、一度発現させられれば術者の力量に見合った者達を幾らでもこちらに送り込める術式。

 かつて、コレのせいで滅んだ村があった。

「……クソッ」

 音もなく剣を抜き放ち、叩き斬る。
 術式は維持構成を保てずに崩壊し、すぐさま消滅する。異臭は残るようだが、気分を悪くしそうだったスィーラを見兼ねてジークが風起こしの魔術で吹き払った。恐らくは、メイリアを襲撃したあの巨人も、これを通して来たのだろう。

 そして、魔族達がこれをわざわざここに設置したという事は。

「……街に襲撃でも仕掛ける気だったか……?いや、それならなんで戦力を温存しなかった……前の奴を襲撃に向かわせてたら、かなりの損害を出せただろうに……」

 広げっぱなしにされていたポータルは魔物が現れる様子もなく、ただジークに斬られるまま消滅してしまった。目的が一切分からない。
 兎に角はポータルを潰せたのだから喜ぶべきなのだろうが、何かがおかしい。ポータルを設置したならば、絶えず魔族を送り続ければ良いのだ。そうした方が人間に打撃を与えられるだろうに、まるでここのポータルは使う気が無かったとでも言いたげに−−


 −−『捨て駒』−−


「……まさか」

 重大な一言が脳裏を駆けると同時。

「……ぁ、ぁ……!」

 バガンッッッ!と。
 掠れた小さな声に続き、鼓膜が直に震えるかのような大音量。大地が砕け、先程スィーラが居た場所は着地のクレーターも含めてズタボロになっている。文字通り踏んだり蹴ったりだ。
 ──同時に。

 轟ッ!と。
 紅蓮の熱線が、天に昇る。

 照射下は街であり、その威力は計り知れない。が、制御はあまり出来ていないらしく、あまりに魔力が込められたそれは暴発して竜巻のように霧散していく。そして、このレベルの力を持つにも関わらず、魔法の制御も出来ない知り合いはジークには一人しかいない。
 そして彼女は、自分の未熟さを知っている。故に、普段こんな大規模魔法を使う事など無い。

 それが意味する事実。そして、スィーラが飛び出した意味。最後に、先程のポータル。


「……畜生っ、やりやがったな魔族共がッ!」





 街唯一の対魔族傭兵をエサ(ポータル)で誘い出し、脆くなったジーク不在の街への総攻撃。

 まんまと嵌められたという訳だ。








 ◇ ◆ ◇










「お願い……気付いて……!ジークっ!」

 上級火炎魔法、アルフィリア。
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