11話
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ょうがその域に近い人種だけです。そんな人種相手に今の一夏さんが勝てるわけないでしょう」
一夏のセンスは確かに一握りの天才のそれだ。だがそれが本格的に光を放つのは相手と駆け引きするだけの地力があってこそ意味がある。地力の差に絶対的な壁がある以上、意味がないと鬼一は言う。
「僕との試合では打ち合いになりそうになっている局面がありますが、でもこれはあくまでも僕の出した結論上そうなっただけです。大部分の操縦者は最初から最後まで踏み込ませないことを考えますよ。一夏さんより技量の高い操縦者が多い現状だと、考えなしに飛び込んだらそれこそ蜂の巣です」
セシリアと一夏の戦いを見て鬼一は考える。もし、セシリアが崩れていない状態で一切の油断がない全力の状態だったなら、この戦いはそれを表したお手本みたいなものではなかったのかと。
「となると基本方針としては能動的に動いて切る、よりも相手のミスを『引きずり出して』致命的な隙を晒している内に切る、が今のところ良いのかな?」
最後は疑問符がついているが鬼一自身もそれを正解だとは思っていないからだ。でも可能性はあるかもしれないから口にした。
「? 鬼一、いまいち言いたいことが分からない」
純粋に鬼一の言いたいことが分からなかったのか、難しい顔のまま一夏は首をかしげる。
「じゃあ一夏さん、例えばご自身が『零落白夜』を受ける側だったらどう感じます?」
鬼一からすればこれはあくまでも一夏の勉強会、なので自分やセシリアがメインなのではない。一夏がメインなのだ。だから一夏に考えてもらう。自分はヒント、もしくは取っ掛かりになりそうなものを掲示することしかしない。
一夏は考えるのが苦手なんだと今回の試合や短い付き合いの中でそう感じた。勢いと感性で生きている人間だと。だがそれではダメなのだ。一定の強さならそれでもいいだろうが、他人に真似できない絶対的な強さを生み出すためには思考する力は不可欠なんだと鬼一は過去の経験から一夏に伝える。
「どう感じるって……うーん」
「なんだっていいですよ。素直に思ったことだけを口にしてください」
最初から全てを求めるつもりはない。例え間違えであっても必死に考えて答えを出す、それが最初の1歩だからだ。強くなるための小さな1歩。
「……えーっと、……怖い? 間合いに踏み込ませたくない? 近寄らせたくない?」
頭が湯気が出そうなほど思考を回転させる一夏。相手の立場で物事を考える癖も必要だと考えた鬼一は、それは難しいと理解している上で一夏に質問した。
一夏の答えにニヤリ、と擬音が合いそうな笑顔になる鬼一。鬼一を知っている人間ならこう評すだろう。
―――悪いことを考えてる顔だ、と。
「どれも正解です一夏さん
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