第1話
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だけどね。だけど、無理をしすぎて心をね、病んじゃった」
「大丈夫だったの?」
「いいや。全然大丈夫じゃなかった。家族や幼馴染がオレのことを心配してくれているって頭では分かっているのに、それがチャンピオンだからって思うようになっちゃってね。このままじゃ、何を言ってしまうか怖くなった。だから、半年ほど休暇をもらって世界を旅してきた。オレのことを誰も知らない場所を求めて。そしてたどり着いたのがこの街だ。街が壊されているのを見て、オレは思い出した。デュエルは侵略や復讐の道具なんかじゃない。最高の娯楽なんだってことを。それをまずはこの街のみんなに思い出してもらいたい」
父さんだってそうだ。チャンピオンなんて物よりも榊遊勝という一人のデュエリストとしてみんなを笑顔にしていたんだ。
「チャンピオンなんて肩書きの前に、オレは榊遊矢って名前の一人のデュエリストなんだって思い出させてくれたこの街に、オレがとっておきの笑顔にしてみせる。それがオレが今一番やりたいことだ」
忘れていたワクワクをオレは取り戻した。このワクワクをみんなに届けるのがエンタメだ。さあ、どうやって届けようか。
「ねぇ、私にも手伝わせてくれる?」
「もちろんさ。オレが笑顔にできない人も、君になら笑顔にできるかもしれない。最終的にみんなが笑顔になればいいんだから」
「黒崎瑠璃、瑠璃って呼んで」
「じゃあ、オレも遊矢でいいよ。プロでの二つ名は『千変万化』多数のデッキを使うデュエリストさ。座右の銘は『誰にでも輝ける瞬間はある』稀にどう使っていいのかわからないカードはあるけどね。新しく製造されるカードに期待する」
「例えば?」
「同じレベル、同じ種族、同じ属性、攻撃力1901以上、通常モンスター、ステータスが両方低いカードかな」
「攻撃力1900?そんなラインあったかしら?」
「条件が攻撃力1500以下のリクルーターと地獄の暴走召喚が使えず、1900以上のモンスターとの戦闘で破壊されない翻弄するエルフの剣士やロードランナーを破壊できないラインだ。ステータスが高い方はいざ知らず、低い方はどうすればいいのかわからないや。まあ、持っていないからって理由か、デザインで気に入っているからとしか言いようがないかな。ああ、いや、禁止令や夜霧のスナイパーなんかの対象名を指定するタイプのカードを回避するためもあるか」
「すごい知識量ね」
「これぐらいは覚えてないとモンスター達を輝かせれないからね。あと、輝かせても負けるのは悔しい」
そんなオレの言葉を聞いて瑠璃が笑う。彼女は瑠璃なのに、柚子のことを思い出して胸が苦しくなる。
「うん、負けるのは悔しいよね」
「そうだよな」
オレの記憶にある柚子は笑顔じゃない。泣きそうな、苦しそ
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