暁 〜小説投稿サイト〜
世界をめぐる、銀白の翼
第一章 WORLD LINK 〜Grand Prologue〜
Air 〜覚醒、純白の翼〜
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蒔風が静かに目を閉じてから十秒がたった。
「奴」にしては時間をかけ過ぎる。

蒔風がもう一度、瞼を開けた。

「いてっ、この・・・なんなんだよ、もーーーー!!」


「奴」の頭部に黒い何かがまとわりついているのだ。

否、「何か」ではない。
カラスだ。

その光景に蒔風は驚く。
一羽のカラスが「奴」の頭を突いていたのだ。

「奴」の行動を邪魔するように
敵うはずもないと知りながらも、戦っていた。


「くっ、こいつ・・・邪魔だ鬱陶しい!!!!」

バキッ

クァーーー!!

そのカラスが叩き落とされる。
怪我はないようで、もう一度立ち上がるが、それでもぐったりしていた。

「ふん・・・観鈴嬢の飼っていたカラスか・・・・」


そう。カラスの名は「そら」
そのカラスは観鈴が少し前から飼っていたカラスだ。
飼っていたといっても勝手に拾ってきただけだが。


「不幸の象徴のカラスまで来るとは・・・お前も終わったな」

その光景を見て蒔風の体に何かが燈る。
その何かが蒔風のもう動かせないだろう顎を、舌を、喉を動かした。


「・・・・・い」

蒔風の口から言葉が漏れる。
「奴」にそれは聞きとれていない。

だからさらに言葉を紡ぐ。

「お・・じゃ・い」

「・・・あん?」

言葉が「奴」の耳に届いた。
しかしまだわからないようだ。

だからまだ言葉を紡ぐ。

「終わりじゃない・・・まだ、終わってない・・始まってすらも、いないんだ!!!!」


【Air】-WORLD LINK- 〜WEPON〜


「彼女たちの物語は・・・始まるはずだった。でも、終わろうとしていた。それが始められるんだ。邪魔はさせない・・・・」

蒔風の体はいまだに浜辺に転がっている。
それでも、蒔風にはやるべきことがあった。

こんな状況になっても、世界は蒔風に戦うことを求めたのだ。




ゴオオオオオオ!!!!


そらの身体が白く輝く。

そしてその光は人の形をとっていく。
光は観鈴の元に飛び、そして徐々に光を失っていった。

そこに立つ男は・・・・

「え?・・・・往人・・・さん?」

「ああ・・・観鈴!!!」

そこに立つのは国崎往人。
神尾家に数日間居候していた青年だ。

彼の持つ法術という力。
ただ人形を操るだけの力。

しかし彼はその力を限界以上に使い、観鈴の死を数日間だけ伸ばした。
たった数日

その数日で神尾親子は救われたのだ。
親子の姿を取り戻せたのだ。

しかし、彼はその身に余る力を行使したため、消滅してしまった。
だが、彼は「そら」に姿を変え、観鈴を見守っていたのだ。
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